
標準試験室とは
標準試験室の規格や精度について解説します。
標準試験室とは
一定の温湿度を安定に保つ試験室を、標準試験室、あるいは標準室と呼んでいます。
物品は、どんな物でも、通常は温度が上昇すれば伸び、温度が下降すれば縮みます。
特に紙等は、湿度の影響で大きく伸び縮みして、硬さも変わり、大きく性質が変わります。
この為、製品の正確な試験は、JISで規定された温湿度条件で、安定した状態で行う必要が有ります。この様な標準試験室は、一般的には、恒温恒湿室とも呼ばれています。温度だけ制御する標準室は恒温室と呼びますが、湿度が実験に影響しない場合にだけ使用されます。
この温湿度条件下で試験を行った証拠として、記録を取って客先に提出している例も有ります。温湿度の記録信号は、標準で装備されておりますが、デジタル機器の記録は、改ざんする事が出来ますから、この様な場合は、記録紙にアナログとデジタルで印刷する記録計を取付けしております。紙に印刷されたデーターなら改ざんできないので、信頼されます。
これらの温湿度は、日本産業規格、JIS Z8703-1983で、試験場所の標準状態として規定されております。国際規格の ISOや、IECに準拠して、下記の様な規格になっております。
温度 20℃、23℃、25℃ この3種類の温度のいずれかとする。
湿度 50% あるいは、65%の相対湿度とする
気圧の規定は、860~1060mbarです。
気圧の規定は、大きな台風の通過時や、山の上でも無ければ、問題の無い値です。
この規格の詳細は、技術資料の JIS Z8703-1983 のページに原本を乗せておりますので、こちらを参考にされて下さい。
日本では、従来、日本の標準的な気候に合わせて、旧JISでは、20℃/65%でしたが、1983年以降は、国際規格に合わせて、新JISの23℃/50%に変更になりました。
それでも、繊維関係等では、現在も、日本の気候に合わせた旧JISの20℃/65%が採用されており、業界によって、独自の温湿度規定に基づいて試験されている例が有ります。
この為、弊社のDPC方式の恒温恒湿室は、20℃~25℃で、50%~65%の範囲で運転が可能な仕様になっております。これより広い範囲の試験室は、弊社では環境試験室と呼んでおり、こちらの制御は、独自のCSC方式になっております。
DPC方式、CSC方式は、弊社独自の制御方式ですから、他社にこの名称で問い合わせされても、何の事だかわかりません。技術資料のページで個別に詳細に説明しております。
標準試験室の精度
標準試験室には、温度と湿度、精度と気圧の規定も有ります。
温度は、0.5級から、15級迄5段階有り、1級は±1℃で、2級は±2℃になります。
湿度は、2級から、20級迄4段階有り、2級は±2%RHで、5級は±5%RHです。
湿度の制御はかなり難しいので、湿度側に1級は有りません。
研究関係の施設で1番要求が多いのは、温度23℃/±1℃で、湿度は50%/±2%です。一般的な空調方式では、温度±1℃は問題ありませんが、湿度±2%は、センサ本体の精度がその程度ですから、実際には、湿度に関しては、かなり厳しい値になっています。
工場などでは、温度2級、湿度5級 (±2℃/±5% )迄の要望が有りますが、これより低い精度の試験室のご要望は、過去に聞いた事が有りません。
恒温恒湿室には、送風機、冷却除湿機、加熱ヒーター、加湿器、制御機器が必ず必要で、これらを省略する事は絶対に出来ません。
実は、精度を落としても、設備にかかる費用は全く同じなのです。高精度にしても、部品の価格は何も変わりません。精度の高さは、技術力の差と言えます。
良く精度はそこそこで良いから、価格を安くできないかと言うご要望が有りますが、弊社の場合は、標準でも精度が非常に高いので、あえて精度を落としても、価格は変わりません。

弊社の恒温恒湿室は、特別な事情の無い限り、弊社独自のDPC方式が多く、仕様書の精度では全て、±1℃/±2% が標準です。
この標準の仕様で納入された装置でも、実際には、温度±0.1℃で、湿度は、悪くても±1%以上の安定度を得ております。
左は、試運転時の写真で、下に見えるのは、気象庁検定付きの温湿度測定器です。この様に測定器にピタリと指示を合わせてお引渡ししております。
弊社にあるDPC方式のレンタル装置は、±0.01℃/±0.02%の安定度を得ており、同業者からも驚愕の性能と驚かれております。
この記録チャートのコピーを次ページに乗せておきます。
この記録チャートは、弊社川口工場に有る、DPC方式のレンタル装置を、実際に運転して得た記録チャートです。
温度幅を左右で20℃の幅に拡大しておりますが、ほとんどふらつかず、オーバーシュートも発生しておりません。
特に湿度をここまで安定化させる事は非常に難しいので、このチャートは、同業者に捏造と言われる事も有りますが、稼働中のレンタル装置ですから、何時でもご覧いただけます。



左の写真は、弊社の実験装置ですが、レンタルとしてご利用いただけます。
装置の入口と室内の写真で見られる様に、かなり狭い部屋ですが、何時でも見学可能で、レンタルとしてご利用も可能です。