
省エネ運転
省エネになる空調機の制御方式について解説します。
省エネ運転
電気料金が高くなりましたので、もっと省エネに出来ないかと、皆様が考える時代になってきました。
現在、恒温恒湿室や環境試験室の空調機の制御は、PID制御方式が主流になっております。
PID制御は、精度は高いのですが、省エネな制御方式とは言えません。
PID制御とは
Proportional・Integral・Differential の頭文字を取った表示で、比例・積分・微分動作の略称です。
これを簡単に説明すると、比例は、操作量を0~100%変化させて、設定値付近に近づける制御で、積分は、設定値にピタリと合わせる補正、微分は、ずれた値を元に戻す制御と考えると、判りやすいと思います。
PID制御は、歴史の古い制御ですが、現在でも、色々な自動制御に応用されております。
比例・積分・微分のパラメータの調整は、昔は技術者の勘や、経験に頼る面が多くて、大変難しい物でしたが、現在は、調節計にオートチューニング機能が組込まれておりますので、どなたでも、簡単に調整が出来る様になりました。
空調のPID制御方式
精密空調では、冷却と、再加熱と、加湿量を組み合わせて、安定した温湿度を得ています。
冷却は、パッケージエアコンか、冷凍機が使用されます。室内空気を冷却すると、室温は低下しますから、再加熱ヒーターを働かせて、設定温度に上昇させて、安定に保持させます。
空気は、冷却してから加熱すると、相対湿度が低下しますので、今度は加湿器を働かせて、設定された湿度迄上昇させて、安定に保持させています。
従来のパッケージエアコンは、2.2kWからシリーズが有りましたが、近年は、最小の機種が3.7kWになりました。エアコンを利用していた恒温恒湿室のメーカーは、小さなお部屋でも、3.7kWを使用するしか方法が無くなりましたが、これはかなり大きな能力なのです。
小さなお部屋に、大きなエアコンを使用すれば、冷却除湿能力が過剰になります。すると、再加熱量と、再加湿量が大きくなり、消費電力が増えますから、小さなお部屋なのに、消費電力が大きくなります。この方式は、お部屋が小さくても、電気料金は高額になります。
冷却除湿量が大きいと言う事は、再加湿量が多くなりますから、加湿器の故障も増えます。高額な電気料金と、加湿器の故障修理で、大きな経費が掛かります。加湿器の故障が多いので、相談したら、純水器を薦められて取付けしたが、今度は純水器の保守に費用がかかり、故障は減ったが、保守費は変わらなかったと言う話もあります。
あまり経費が掛かるので、やむなく加湿器を停止させ、恒温恒湿室を、ただの恒温室としてお使いになっているのは、訪問先でよく目にします。
環境試験室は、低温低湿から、高温多湿迄運転できますが、低温低湿運転と、高温多湿運転では、必要な冷却除湿量が大幅に異なります。運転する条件により、複数の冷凍機を使い分けている例が多く有ります。
お部屋が小さい場合は、コスト面から1台の冷凍機で無理にカバーさせる例が多く、運転条件によっては、消費電力が多くなり、やはり電気料金と加湿器の故障に悩まされます。
エアコンを利用して、PID制御している恒温恒湿室のメーカーは多く、エアコンは汎用品ですから、定価は高くても、仕切り価格がとても安いのです。市販のヒーターユニットと、加湿器を組合せれば、簡単に価格の安い恒温恒湿室が作れるのです。
見積を取れば、この方式は価格が安いので、価格の安いメーカーから購入するのが普通です。
しかし、この方式の場合は、電気料金が極端に高くなり、加湿器の故障も続発しますから、年間の経費が高額になるのです。購入時には、ここまで考えておりません。電気料金は私が支払うのではない、私は安い装置を選ぶのが仕事だと、極論をおっしゃる担当者もおり、あきれてしまいます。数年で価格差は回収出来て、その後の経費は極端に少なくなるのです。
このPID方式の最大の問題点は、電気料金の高さと、加湿器の故障の多さですが、現在も試験室の空調方式の大半が、このPID制御方式なのです。
加湿器不要の恒温恒湿室
恒温恒湿室で検索すると、加湿器を使用しない露点散水方式の広告が目に着きます。これは歴史の古い方式で、1960年代から有りますが、現在も基本原理は変わっておりません。
現在も数社から発売されております。PID方式と比較すると、消費電力は半分以下になり、加湿器が無いので、故障も少ないのですが、室内がカビ臭くなると言う欠点が有ります。
この露点浸水方式は、弊社ホームページの技術資料の中の、露点散水方式 の項目で、説明しておりますから、ご参照下さい。
弊社DPC方式
弊社には、この露点散水方式を、長年改良を続けて完成した、DPC方式が有ります。露点散水方式を更に省エネにして、湿度の精度を高めた物で、故障が極めて少ない空調機です。
これは、技術資料のDPC方式の項目で説明しておりますのでご参照下さい。
カビ臭くならず、故障が少なく、メンテナンス性が極めて良い空調機です。この資料を見れば、露点散水式と類似していますが、大きな差が有る事に気が付かれると思います。
DPC方式は、弊社独自の制御方法ですから、他社に問い合わせても、何の事か判ません。
CSC方式
DPC方式は、冷水を直接散水して空調を行いますので、低温低湿運転を行うと、水槽内の水が凍結してしまう欠点が有ります。これは恒温恒湿室専用の空調機です。
低温低湿から高温多湿迄、幅広い温湿度条件の精度を高くして、しかも極端に省エネで運転する為に開発したのが、弊社独自のCSC方式になります。
冷却、除湿、加熱、加湿の4条件を、出来るだけ省エネになる様に個別に制御する方式です。
CSC方式は加湿器を使用しますが、弊社の方式は、余裕のある能力の加湿器2台を空調機の内部に組込み、これを軽く働かせています。運転中に、湿度を全く乱さず、加湿器を交互に洗浄して、長期間、加湿器のトラブルを防止します。
また、加湿器が1台故障しても、残る1台が頑張るので、実験はそのまま継続できます。
故障した加湿器は、お客様でも簡単に交換できる様に工夫されております。
これは、技術資料の CSC方式 の項目で説明しておりますのでご参照下さい。
CSC方式は、弊社独自の制御方法ですから、他社に問い合わせても、何の事か判ません。
弊社のDPC方式とCSC方式は、エアコンは使用しておりません。信頼性の高い、冷凍機を使用しております。能力の可変出来るインバータ冷凍機は、0.75kWから大きな冷凍機迄、シリーズ化されていますので、目的の温湿度条件に合わせて選択しており、運転する温湿度に合わせて、一番省エネになる様に、冷却除湿能力を可変して制御しております。
空調機の省エネ改造
この様に弊社の空調機は、とても省エネであると説明をさせて頂きましたが、これを見たお客様から、現在使用している空調機の性能が悪くて、精度が出ない。消費電力が非常に大きくて、故障が続発して高額な修理費がかかると言った悩みから、この空調機を、何とか省エネに改造が出来ないか?とのご相談が良く有ります。
空調機の制御システムが違いますので、比較的簡単に改造が出来る場合と、改造が不可能な場合が有ります。改造が可能な場合は、冷凍機を交換して、制御盤を改造するだけで済む場合も有りますが、不可能な場合は、空調機と冷凍機を交換しております。
制御盤はその盤内の状況により、現場で改造、又は、新しい制御の物に交換しております。
試験室の部屋のパネルは、ほとんどの場合、再利用ができますので、大切に使用されていた40年前の木造の試験室でも、再利用して、空調設備だけ交換した例が有ります。
省エネに改造、あるいは空調機を交換すると、精度が高くなり、多発していた故障は極端に減少して、消費電力は、1/3~1/6に削減されますから、お客様には大変喜ばれております。
この実績は、技術資料の 省エネに改造 の項目で実例を紹介しております。
消費電力の多さや、故障で悩まれている場合は、これらを参考にされて、相談していただきたいと思います。
極端な省エネ性は、詐欺師と思われる様で、信用されません。そこで弊社では、川口工場に、DPC方式と、CSC方式を、ショールームとして公開しております。レンタルとして使用して頂く事も可能です。
試験室をご検討されている場合は、見学される事をお薦めします。ご希望の方は、赤羽駅から、車でご案内いたします。