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用語集(露点散水方式)

専門用語をわかりやすく解説します。

露点散水方式(ろてんさんすいほうしき)

露点散水方式は、メーカーにより露点飽和散水システムとも呼ばれています。
現在でも、数社の恒温恒湿室のメーカーがこの方式を採用しております。
この空調機の元になる物は、エアワッシャと呼ばれる古くから有る技術で、当初は冷水をスプレーする方式で、大きな横型の装置でした。
大きなスペースが必要な事と、循環冷却水をスプレーすると冷却水が循環する空気との接触で汚れ、スプレーノズルがすぐに詰まってしまう欠点が有り、いつしかこの方式は消えてしまいました。
現在は、露点散水方式と名前を変えて小型化された空調機が、数社から製造販売されております。

露点散水方式を説明する前に、相対湿度と露点温度を理解して頂くと判りやすくなります。
まず、正確に23℃/50%の条件を確認するには水銀温度計の乾球温度と、濡れたガーゼを巻いた湿球に風速1m/secの風を流し、乾球温度と気化熱で低下した湿球温度の差から、換算表で相対湿度を確認します。
この時の湿球温度は、16.25℃になります。この方式の測定器は下の写真の様な形状で、アスマンと呼びます。測定にはひと手間かかりますが、経年変化が無いので正確な湿度が測定できます。
現在は半導体センサの湿度計が主流です。
直接湿度が測定出来て便利ですが、これには経年変化が有り製品にはバラツキが有って、大きな誤差を出す物が有ります。正確に測定するには、年1回メーカーで校正する必要があります。

アスマンは経年変化が有りませんので、気象庁検定書に有効期限は示されておりません。
正確に相対湿度を管理したい場合は、原始的ですがアスマンをお薦めします。
何台並べて測定しても、湿球ガーゼと蒸留水が管理されていれば、同じ測定結果が得られます。

この他に知っていただきたい温度に、露点温度と呼ばれる温度が有ります。
簡単に表現しますと、夏季に冷蔵庫から冷えたビールを取り出しますと、直ぐに表面が濡れて来ます。
この現象を結露と呼びますが、外気湿度の低い冬季にはこの現象は発生しません。
夏季の外気の温湿度を30℃/70%と仮定します。
すると、この部屋に冷蔵庫から表面温度が24℃以下のビール瓶を取り出すと、露点温度以下なので必ず表面に結露が発生しますが、25℃以上の生ぬるいビール瓶なら絶対に濡れません。
空気は温度を下げると、相対湿度が高くなる性質が有ります。ずっと温度を下げて行くと相対湿度は上昇して、いつか100%になります。これ以下に温度を下げると、この空気中にはもう水分が溶け込めなくなり、水として姿が見えて来ます。これを凝縮水と呼びます。
そして湿度が100%になり、もう水がこれ以上溶け込めない状態になった空気の温度を、露点温度と呼んでいます。
冷たいビール瓶に室内の空気が触れると、その部分の空気温度が下るので、瓶の表面の湿度は上昇します。
この時の相対湿度が100%になると表面が曇り始め、水滴が発生します。
曇り始めた時のビール瓶の表面温度が、露点温度です。

露点温度の冷水を作り、これを霧にして噴霧してここに空気を通すと、理論的には湿度100%の露点温度の空気が作れます。
この空気を再加熱してやると、相対湿度が下ります。露点散水方式はこの原理を応用した物です。
23℃/50%の空気の露点温度は約12℃です。12℃の水を散水している空調機の中に室内の空気を流してやると、理論的に12℃で湿度100%の空気になります。
この空気を再加熱して23℃にすると相対湿度が下がって、丁度23℃/50%の温湿度の空気が作れます。

この原理を最初に応用したエアワッシャ装置は時代の流れで無くなりましたが、替わってこの装置を縦型にして設置スペースを小さくする事が考えられ、冷水は霧状では無く、散水する水滴でも充填剤を使用すれば、それなりの温湿度が得られる事が判明しました。
1960年代に、ほぼ現在の形で露点温度の冷却水を散水する方式が開発され、恒温恒湿室として製紙会社を中心に採用され、普及して来ました。これが露点散水方式の歴史です。

以後、空調機は縦形にして、内部で露点温度の冷水を散水する方式の空調機は、現在でも数社で製造され、全国に販売されております。
単純な方式なので大きな改良点も無く、現在までの60年間、この歴史ある空調機は今でも省エネ性の高い空調機として定評が有り、各方面に納入されております。
長い年月でほぼ完成された形ですから、その後は大きな改良もされておりません。
欠点も有りますが現在も改良されず、そのままの形で製造販売されております。

欠点は、空調機の熱交換率が100%では無いので季節や天候で湿度が変動する問題や、冷却循環水の劣化、充填剤にカビが生えて室内がカビ臭くなる等の問題が有ります。
最大の欠点はこの充填剤の汚れで、冷却水の交換を怠ると表面にバイオフィルムと呼ばれる細菌の巣が出来て、数年ごとに充填剤を全交換しないと室内がカビ臭くなります。
このバイオフィルムの付着状態を下記の写真でご覧ください。
これは、空調機の吸込口の中の状態です。この写真は他社製品のメンテナンスを依頼された時の写真ですが、3年間メンテナンスはしていなかった様です。
お客様はここを通過したカビ臭い空気を吸っていました。
衛生的な面を考えたら、この状態では健康的に恐ろしくありませんか?

弊社では、この露点散水方式を独自の技術で改良を重ねてきており、20年程前からDPC方式 (dew point control)として製造販売をしております。
他社と大きく異なる点は、完璧な制御で±0.01℃/±0.02%RHの、同業者から驚愕とか疑似信号と言われる温湿度の安定性を得ている点です。
天候や季節の変化でも、他社の露点散水方式の様に相対湿度は乱れません。
DPC方式の温湿度の記録チャートを最後に公開しておりますのでご覧ください。

DPC方式は、独自の回転散水方式ですから効率が良く、消費電力も他社の半分程度に削減されております。
また、完璧な散水により充填剤は全部濡れますから、カビが生えにくくなっています。
散水にムラが有ると、濡れない部分との境目にカビが生えて固形化します。
この為、他社製品では定期的な(1~3年)充填剤の交換が必要になります。
弊社装置は運転中はもちろん、長期の休暇で停止中も冷却循環水の管理を行っており、メンテナンス無しでの無故障記録は、20年を超えた物が2台ありました。
お陰様で、さすがに空調機は21年目で入れ替えて戴きました。
現在でも無故障のまま、10年を超える連続運転を記録している装置は数多く有ります。

下の写真は、20年前に納入したDPC方式の空調機の吸込口の中に見える充填剤です。
流石に長い年月を経過したので、最近オーバーホールをして充填剤は交換しておりますが水質が良く、定期的に手動で薬剤洗浄をしてやればこの様にきれいな状態を保ちます。

また弊社は、室内の温湿度条件は乱さずに、運転中に冷却水の自動置換を行っております。
長期休暇で運転を止めても水質を保持させる為に、停止中も自動置換だけ行わせています。
これにより水質の劣化が無く、カビやバイオフィルムも発生し難い空調機になっています。
上の写真は20年前の装置ですが、冷却コイルは銅製です。ご覧の様に腐食も見られません。
他社製品では水質の低下により冷却コイルが腐蝕して、数年~10年で水中の冷却コイルに穴が開き、大きなトラブルになっています。
冷凍機が水を吸うので、冷凍機も故障して冷却コイルと冷凍機を同時交換する必要が有り、大変大きな修理費が発生しています。

他社の露点散水方式では、この冷却コイルが数年で腐蝕する例が有ります。腐蝕すると、高額な修理費がかかります。これに懲りたお客様には、弊社では腐食し難いステンレス製の冷却コイルを使用しております。
また遠方のお客様では、万一の場合に高額な修理費がかかりますので、長期間のトラブル防止の為に、ステンレス製の冷却コイルにしている例も有ります。このコイルは、長期間腐食のトラブルが有りません。

下の写真は、工業用水を使用している現場のDPC方式の空調機の吸込口です。
入替え前は他社の露点散水方式で、冷却コイルが腐蝕して冷凍機迄故障したので、まだ10年未満でしたが弊社DPC方式に入れ替えていただいたものです。
工業用水なので腐蝕が心配され、ステンレスの冷却コイルを使用しております。
この写真は納入2年後に点検した時の写真ですが、工業用水を使用し2年間の連続運転であったのと、定時的な自動置換だけでは完全な冷却水交換ができずに、冷却水には濁りが発生しております。
充填剤に着色は見られるものの、バイオフィルム等は発生しておりません。勿論、冷却水の全交換で水は透明に戻っております。

DPC方式は、夏季の温湿度の高い季節は空気中の水分を冷水で凝縮させるだけで、
設定された湿度を極めて正確に得ております。
基本的には夏季には水道水も使用しない、究極の省エネ性を持っております。
この装置も、夏季であれば空気中の水分を凝縮させて自然に増加した冷却水をブローさせておりますから、通常は透明の冷却水になります。夏季であれば、冷却水がこれ程汚れる事は無かったと想定されます。
弊社のDPC方式には、20年前から全ての機種に標準で、下の写真の様な散水状況を確認する窓が取付けされており、空調機内部を水洗する洗浄キットも付属しております。

左側の写真は、散水状況の確認窓です。

右側の写真は、水洗洗浄キットです。

この窓のビスを外してここを開ければ、充填剤の汚れは上からも目視出来て、洗浄する事もできます。
薬剤を使用すれば、充填剤の汚れも落とせます。他社製品の様に、定期的に充填剤を交換する必要は有りません。洗浄するだけで綺麗になりますから、ほぼメンテナンスフリーの空調機と言えます。
空調機の内部はこの様に、お客様でも簡単に洗浄する事が出来る構造にしておりますから、常に清潔な状態で運転をしていただく事が出来ます。
この様に単純な構造で、故障する部品が非常に少ない空調機ですから、10年間以上も無故障の記録が良く出る空調機である事はご理解いただけると思います。
また万一の故障時も、部品交換は1名で短時間で行えるように、空調機のメンテナンス性も考慮しておりますから保守費用もお安くなります。

お客様によっては、露点散水法式もDPC方式も水で空調しているだけで他と同じだから、何も変わらないだろうと考えておられますが、この様に性能とメンテナンス性は全く異なる機種です。
この様に大きな差が有りますから、基本原理は露点散水ですが、あえて弊社ではDPC方式と表現しています。最後に、弊社レンタル室のDPC方式で実際に記録した温湿度のチャートを添付します。
温度は左端が10℃で右端が30℃に拡大しておりますから、中心が20℃です。
赤い線が温度の変化で、青い線が湿度の変化です。
これは驚愕の性能と言われたり、これはあり得ない、どうせ疑似信号だろう等と言われております。

このチャートを見て頂いてもなかなか信じていただけませんので、弊社ではこの装置をレンタル室として埼玉県川口市で公開しております。
ここには風速計、騒音計、電力計等が有りますから、実際に見て頂けると低風速低騒音なのに精度が非常に高い事、消費電力が極端に少ない事、夏季は水道水も消費しない事、メンテナンス性が非常に良い事等がお判り戴けます。百聞は一見に如かずです。
別途レンタル室の資料がありますから、こちらもご覧になり、ご興味が有って見学を希望される場合は連絡してください。赤羽駅から車でご案内します。概ね、15~20分の距離になります。

 
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