
冬に電気料金が高くなる試験室
余分な除湿・加湿を行うと、電気料金が高くなります。
冬に電気料金が高くなる試験室
恒温恒湿室は、概ね20~25℃の温度域ですから、汎用のパッケージエアコンをそのまま利用している例が多く有ります。低温から高温迄、温湿度域の広い環境試験室では、着霜等の問題がありますから、冷凍機を工夫して、連続で冷却除湿運転を行っています。
冷却により設定温度より低下した温度は、加熱ヒーターで設定温度迄上昇させて、保持させています。空気は、冷却してから加熱すると除湿されますから、室内の湿度は低下します。低下した湿度は、加湿器を使用して、設定湿度迄上昇させて、保持させています。
この方式は、PID方式と呼ばれ、現在でも主力の精密空調の制御方式です。
従来のエアコンや、冷凍機は基本的に能力制御ができません。必要な冷房除湿能力の選定は、夏季に、入室者の為に換気を行い、室内の最大発熱量を想定して、必要な冷却量を選定しています。あまりギリギリの能力を選定すると、夏季は、ほとんど加熱ヒーターは働きません。また、除湿量がギリギリであれば、加湿器もほとんど働かない事になり、この時点では、とても省エネな装置になります。
但し、夏季に時々発生する過酷な高温多湿の日に、たった1日でも、温湿度条件が得られなければ、クレームになります。通常は、この過酷な数日の為に、安全率を掛けて、十分に余裕の有る冷房能力のエアコンや、冷凍機を選定しています。
パッケージエアコンや冷凍機は、従来は冷房能力が固定です。3馬力、5馬力、7.5馬力、10馬力と言った容量の中から選定します。
パッケージエアコンは、過去には2.2kW (3馬力) が有りましたが、現在3.75kW (5馬力) 以下の機種が無くなり、エアコンを利用していたメーカーは、小さなお部屋でも、5馬力を採用するしか方法が無くなりました。この様なメーカーに小さな恒温恒湿室を依頼すると、空調機が過剰設計になりますから、電気料金がとても高額になり、加湿器の故障が多発する事になります。
また、冷凍機の場合でもそうですが、5馬力では少し能力が不足かなと思われる場合は、余裕を見て、その1段上のランクの7.5馬力を採用する事になります。この中間の機種は、エアコンにも冷凍機にも有りません。
この場合、余裕を見て、大きくした2.5馬力分の差が、過酷な夏季以外では、過剰な冷却になります。この冷却差を、加熱ヒーターで上昇させると、除湿量が大きくなります。
除湿量が多ければ、その分、加湿器も大きくする必要が有ります。
夏季の冷却に余裕を見て、1ランク上の、2.5馬力多い7.5馬力の冷凍機を選択すると、この余裕を見た分だけ、バランスを取る為に、ヒーターと加湿器の容量が増え、消費電力が、10kW近くも増えてしまう事になります。
この試験室を冬季に運転する事を考えます。冬季は外気の温度も湿度も低いのですが、冷房能力は固定ですから、全く必要の無い冷却除湿を、冬季でも定格の能力で行います。
この結果、室内の温湿度は極端に低下してしまいますから、加熱ヒーターは、低温な外気と、大きな冷却量に打ち勝つ為に、大量の加熱を行う必要があります。
空気は、冷却して加熱すると、除湿しますから、全く除湿する必要の無い冬季も、大量の除湿を行ってしまうので、大きな加湿器で、大量の加湿を行います。この為に、消費電力が極端に多くなります。また、加湿器の稼働率が上がれば、加湿器の故障も多発します。
これが、冬季になると電気料金が高額になり、加湿器の故障が多発する理由です。
ちょっと考えると、暑い夏季の方が、エアコンにとっても過酷ですから、夏の方の電気料金が高くなりそうな気がしますが、試験室の制御に使われているPID方式は、冬季の方が、電気料金が高くなるのです。
また、空調機を覗くと、空調機の冷却コイルからは、年間を通して、ポタポタと水滴が落ちており、排水パイプからはチョロチョロと排水が流れ出て来ます。
これは、加湿器で蒸発させた水を、再び凝縮して得た蒸留水です。PID方式は、購入すれば高価な蒸留水を、どんどん作って、下水に捨ててしまっているのです。
この様な試験室の運転には、高額な経費と保守費がかかりますから、かなり悩まれてから、省エネで、故障の少ない、弊社の空調方式に改造を希望される例が良く有ります。
弊社ホームページの省エネの項目で、この省エネ改造の実例を乗せておりますので、ご参照下さい。
これらの実例は、他社の装置を、弊社独自のDPC方式に入れ替えた物や、既存の装置を、弊社のCSC方式に改造した物です。消費電力は、悪くて1/3、改造前の装置が過剰設計の場合は、1/6以下になった実例も有り、故障も極端に少なくなります。削減された電気料金の差は、軽く数百万円になりますから、この改造費は、数年で回収が出来ています。
DPC方式は、基本的に夏季は除湿しているだけですから、一滴の水道水も消費しません。冬季は必要な量だけの加湿しかしないので、基本的には、1滴のドレンも出ません。
蒸留水を無駄に発生する装置より、はるかに省エネで故障が少ない空調機で有る事は、この説明だけでも、ご理解いただけると思います。
CSC方式は、加湿器を使用しますが、通常の運転でも従来方式の1/3程度の消費電力に低下しますから、加湿量も少なく、これだけでも加湿器の故障が少なくなります。この他に自動交互洗浄方式も採用しておりますから、更に故障が少ない方式です。
CSC方式の制御盤には、標準で省エネモードのスイッチが有ります。省エネモードでは、夏季と冬季以外の精度はJIS2級程度に低下しますが、消費電力は、1/10以下に低下した実例も有ります。
省エネモードは、夏季には精密に除湿するだけですから、極端に消費電力が削減されます。
どちらのお客様も、改造しただけで、こんなに電気料金が安くなり、故障もしないので、これならば、もっと早く改造を実行するべきであったと、良く言われます。
DPC方式、CSC方式の詳細は、弊社ホームページの恒温恒湿室の項目をご参照下さい。
他社に問い合わせされても、これは弊社独自の方式ですから、何の事か判りません。