驚愕と言われる温湿度の精度
アイテックスが誇る業界でも驚愕の温湿度精度。
どれほどの精度なのか、実際のデータと共に解説します。
驚愕と言われる温湿度の精度
弊社独自のDPC方式は、空気より比熱の大きな冷却水を使用して、精密な温湿度の制御をしております。この装置で得られる温湿度の安定性は、業界でも驚愕と言われています。
次ページに示すのは、2005年製造の弊社の古い恒温恒湿室を、2010年に現行のDPC方式に改良して、ショールーム(レンタル可能)にした装置の記録チャートのコピーです。
改良してから、十数年を経過したので、2024年に、その後の精度に変化が無いか、再確認する為に、改めて温湿度の安定性を測定した実際の記録チャートです。
通常の恒温恒湿室では、温度0~50℃、湿度0~100%RHで記録しますが、この測定時の記録計の測定目盛幅は、下記の様に、大幅に拡大しております。
温度は、左端が10℃、右端が30℃で、全体が20℃の幅として、中心が20℃になる様に設定しております。
湿度側は、30~80%で、全体を50%の幅に拡大しており、中心付近が55%になる様に設定して、温湿度を記録しております。
チャート上に、温度±1℃の記録幅と、湿度±2%の記録幅を示しております。
記録チヤート上では、この様に、かなり広い幅になります。
赤い線が温度で、ご覧の様に、ここまで拡大しても真っすぐに記録されており、±0.01℃以内の変動しか発生しておりません。チャートの速度は、ひと目盛りが30分です。
青い線が湿度で、とても早く変動する性質が有り、安定させるのは非常に難しいので、JIS規格でも、2級の規格迄しか規定されておりません。JIS規格でも、最高が±2%なのです。
次ページのチャートは、ごく標準の、弊社DPC方式の物です。湿度は少しギザギザに見えますが、記録幅を大幅に広げている関係で、実際には0.02%程度しか変動しておりません。
この温湿度の安定性が、空調業界でも驚愕と言われる性能です。
左脇に、記録した日時と、温湿度の測定結果が印字されております。
この記録では、運転途中に運転条件を、旧JISの、20℃/65%から、新JISの23℃/50%に設定変更しておりますが、全くオーバーシュートしていないで移行する事にも、皆様が驚かれます。このチャートは、疑似信号では無いかと言われる程の優れた安定性を示しています。
但し、DPC方式は、比熱の大きな冷水で温湿度の制御をする関係で、移行速度はあまり早く有りません。チャートの様に、湿度の低下には、少し時間がかかっております。
但し、恒温恒湿室は通年連続運転する例が多く、DPC方式は、極端に省エネな装置なので、これが問題になった事は、今迄に有りません。
省エネ性能の比較については、別途資料を公開しておりますので、こちらをご参照下さい。
但し、このチャートは、正確に言うと温湿度の安定性であって、絶体的な温湿度の精度ではありません。
精度は、定期点検時や、試運転時に気象庁検定付きの測定器で確認して、誤差が有れば補正してから、お引渡ししています。
また、温度分布を心配される場合は、別途、温度分布の資料をご参考にされて下さい。
弊社の恒温恒湿室は、±1℃程度の仕様であるのなら、どの機種でも、制御幅は0.1℃以内に収まっており、温度分布も±1℃の幅に入ります。
ご希望により、温度分布の測定記録も行いますが、この測定には別途費用がかかります。
弊社の恒温恒湿室では、仕様が±1℃であるのなら、費用をかけて、温度分布の測定をする必要は有りません。
温湿度の絶対精度
新品の温度調節計、湿度調節計、温湿度センサを2台使用して、同じ場所の温湿度を測定しても、両者の湿度側の指示は、なかなかピタリと一致する事は有りません。
センサメーカーには、その様な誤差は無いと、否定されますが、温度の方は、ほとんど一致しますが、湿度の方は、実は、数% 違う指示値を示す事が良く有るのです。
メーカーの校正証明付の新品の調節計とセンサを採用しても、その指示値は、経験上では、気象庁検定付きの測定器と、ピタリとは、あまり合いません。お客様がお持ちの、メーカーに校正に出したばかりの測定器と、湿度の指示が合わないと言う苦情も良く有ります。
おんどとりと言う小型の測定器が良く温湿度の確認に使用されております。大量生産品ですが、常温常湿では、指示が良く合いますので、現場でも良く使用されております。
但し、恒温多湿や低温低湿になると、この測定器と指示が合わないとの苦情も有ります。
おんどとりは汎用品で、測定器ではありません。常温常湿ではかなり正確ですが、この範囲から温湿度が外れた低湿度や多湿度の精度には、少し無理が有るようです。
経験上、測定器として信頼できるのは、水銀温度計です。湿度は湿球ガーゼを使用した湿球温度との差から、湿度を読み取るアスマンが一番正確で、原理的に経年変化も有りません。
右の写真は、通風型温湿度計で、通称アスマンと呼ばれる製品です。
2本の水銀温度計で構成されており、片方にはガーゼが巻かれております。
このガーゼを蒸留水で濡らして、ここに風速2~3m/secの風を流すと、気化熱で湿球側の温度は低下します。この差から換算表を用いて、相対湿度を割り出す方法です。
付属する換算表では、0.1℃毎の数値しか見られず、四捨五入された数値ですが、もっと正確に割り出す、写真の様な計算尺も市販されております。
かなり原始的な方法ですし、アナログで、最小目盛りは0.2℃ですから、0.1℃付近の微妙な差になると目視では、読取り誤差も起きますが、適正なガーゼの巻き方であれば、何台並べても同じ温度と湿球温度を示します。
ちなみに、アスマンは、ガーゼが規定通りに巻かれておれば、原理的に経年変化は有りません。
この為、気象庁検定付きの新品のアスマンの検定書には、有効期限が記載されておりませんでした。お客様が心配されるので、再検定に出しましたら、検査の有効期限は、十年と記載されていました。
この様に、ほとんど経年変化の無い測定器と言えます。
実際の試験室では、ガーゼや蒸留水の保守の手間のかからない、半導体方式の湿度センサとデジタルの測定器が使われております。但し、半導体のセンサは、同じ場所に数台並べても、全部が、同じ湿度の値を示す事は、経験的にまず有りません。
温湿度センサを数台お持ちのお客様から、センサを部屋の各端に置いたら、温度分布は良いのだが、湿度分布が悪いと言われる事も良く有ります。そこで、湿度センサを1ヶ所に集めて測定して貰うと、同じ場所なのに、指示された湿度指示はバラバラに離れたままで変わる事が無く、この差は、湿度センサのバラツキだったのかと、驚かれます。
理論的には、温度が同じなら、相対湿度は必ず同じになります。試験室で、温度分布が良くて、湿度分布だけが悪い例は、理論上ではあり得ないのです。
また、これらの半導体式センサのデジタル計器は、校正証明付きの測定器であっても、経年変化によるドリフトが有りますから、校正の有効期限は1年間です。
現在の恒温恒湿室では、ガーゼや、蒸留水の保守に手間がかからない様に、半導体のセンサが使用されておりますが、メーカーの校正証明付きの新品であっても、検定付きのアスマンと比較すると、最初から湿度に誤差が発生している事は、実は、良く有る事なのです。
センサメーカーには否定されますが、校正付きの新品のセンサであっても、2台並べて比較すると湿度指示がピタリと合わない事は、良く有る事例です。
この業界に携わった人なら、湿度センサの指示が実際の現場では合わない事は、常識です。
また、長時間の高温多湿運転や、溶剤の使用等、使用する条件によっては、湿度センサは大きく経年変化する事が有りますから、精度を重要視する場合は、定期的にアスマン等の測定値と比較して、誤差が発生していないか、確認する必要が有ります。
アスマンを手に持って測定すると、正確には人体からの輻射熱や、呼気による湿度の誤差が発生します。できれば無人で測定したいのですが、アスマンでは、顔から離れたら水銀温度計の目盛りを読み取る事は出来ませんので、風下で呼吸を止めて測定する必要が有ります。
そこで弊社では、この様な誤差を出さない様に、水銀温度計を利用した、気象庁検定付きのデジタル表示の温湿度測定器(ハイグロステーション) で、無人のお部屋で、センサ部分の精度を確認して、調節計の指示を、この指示に合わせる様に、補正しています。温度分布を工夫して高めておりますから、恒温恒湿室なら、湿度分布の心配をされる事は有りません。
弊社では、新設の恒温恒湿室の試運転時には、必ず下の写真の様に、温湿度計の指示を検定付きの測定器で確認して、誤差があれば、その測定器の指示値に合わせて補正しております。
下の写真は、試運転時や、改造、定期点検で、実際に温湿度の比較を行っている状況です。
右側に見えるのが、気象庁検定付きの温湿度測定器 (ハイグロステーション)です。
弊社では、下の写真の様に、室内から温湿度が見える様な構造にした試験室が多く有ります。
この写真の様に、室内の温湿度センサの付近に、気象庁検定付きの測定器のセンサを配置して、この指示に合わせて、制御盤側の温/湿度調節計の指示を補正しています。
弊社では、この様に、新品のセンサを使用した新設の恒温恒湿室であっても、必ず温湿度は検定付きの測定器で確認しており、誤差が有れば、補正してからお引渡しをしております。
また、半導体センサは、使用条件によっては、ドリフトする事が有りますから、定期点検では、必ず、温湿度の精度の確認を行い、ズレが有れば、指示値の補正等を行っております。