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ネット広告の嘘

一流メーカーの名前を利用したネット広告のインチキ品について

ネット広告の嘘

試験室とは直接関係有りませんが、空調と電気のプロの目でYouTubeや、Google等のネットを見てますと、夏季には室外機の無いクーラー、冬季には極端に省エネなヒーターや、車のウインドウの除霜器、また季節には関係有りませんが、針の無い腕時計型の血糖値測定器等、ネットは、かなり怪しげな広告で溢れております。

これには、ダイキン、三菱電機、三菱重工、日立製作所、パナソニック、本田技研、シチズン等の国内の一流メーカーの名前や、京都大学、東京大学、気象庁迄も、共同で開発したと、はっきり書かれており、言葉でも、これが事実の様に宣伝しております。
しかし、そのメーカーの製品を調べてみても、何処にも、その様な製品は見当たりません。

電気ファンヒーター

冬季になると、ファンの付いた電気ストーブの様な暖房機が、あちこちの販売店から、全く同じ製品や、同じような製品の宣伝が頻繁に目に着きます。
以前は、メーカー名を言葉で言ってるだけで、文字では出していなかったのですが、最近は、日本の一流メーカーの名前だけでなく、ロゴマーク迄、画面にはっきりと表示されております。何故、この様なデタラメな広告が許されているのか、不思議に思っています。

いろいろな形の電気ヒーターが宣伝販売されておりますが、共通して、3秒で部屋が温まるとか、電気料金が24時間で10円とか、1週間で消費電力が1kWとか、外気が-30℃でも、室内は下着で過ごせる。エアコンの様に乾燥しない。120平方メートル(36坪)迄の暖房が出来る。ドイツの高性能省エネチップ搭載で、消費電力90%削減等と記載されております。
良くまあ、こんなデタラメでとんでもない嘘が、堂々と宣伝できるのか驚いています。

定格を見ると、110V 380Wになっている物が多く有ります。日本は100Vで、C国は110Vですから、これだけ見ても、日本の一流メーカーの名前を出しておりますが、日本のメーカーの開発商品では無い事が判ります。

電気料金は、契約電力と使用する電力量で変わりますが、東京電力の場合、1kWを1時間使用すれば、電気料金は30~40円です。広告に有るヒーターは、380W~1kW程度です。1kWを1時間使用すれば、30~40円ですから、どう考えても、24時間で10円と言う電気料金や、一週間で1kWの消費電力等は、絶対に出る筈が有りません。
380Wを1時間使用するだけで、東京電力の電気料金は約10円になりますから、24時間では240円です。3時間使用すれば、1kWを超えます。宣伝文句の24時間で10円や、1週間で1kWとは、まるで桁が違います。

お部屋を電気ストーブで暖房した事が有りますでしょうか? 電気ストーブは、600~1200Wの消費電力が多く、1200Wでも、手足を温める程度です。トイレや、お風呂場程度の、小さなお部屋でなければ、冬季に、快適に感じる程、部屋の温度は上がりません。
やってみればわかりますが、ヘアードライヤは、大体消費電力1200Wで、強い風が出ますが、これをお部屋の暖房に使ったら、冬のお部屋の温度は何℃上がるでしょうか?

電気ストーブや、ホットプレート、ヘアードライヤの定格は、1.2kWが多いのですが、家庭用のコンセントの電流容量が、15Aなので、最大で1.5kW迄しか使用出来ません。
1.2kWの定格が多いのは、過熱、火災等を考慮して、安全を優先した定格にしている為です。

家庭用の機器の消費電力の計算は簡単で、電圧×電流ですから、1kWの電流は10Aです。
これは、オームの法則で、100V×10A=1000Wの計算式で示されます。
ヒーターの効率は、どの様な素材でも100%ですから、流れた電流で発熱するのは、どの様な材料で、どの様な形状であっても、どの様な方式であっても、全く同じなのです。
オームの法則で計算できる様に、どんなに科学が発達しても、電圧×電流以上の発熱は、絶対に有りませんので、ご注意して頂きたいと思います。

入力電力より大きな出力電力、つまり発熱量が得られたら、間違いなくノーベル賞です。

広告に有る110Vで、380Wのヒーターを、日本の100Vで使用すると、ヒーター電力は、電圧が低いので、316Wに低下してしまいます。1200Wの電気ストーブやヘアードライヤでも、ほんのわずかしか上がらなかった室温が、これは、たった316Wの暖房機なのです。
これで冬季のお部屋が、下着になるほどの温度に上がる筈は、絶対に有りません。
せいぜい机の下に入れて、足を温める程度の暖房能力です。

これらの宣伝文句では、ドイツ製の省エネチップ搭載の新型のセラミックヒーターだから、効率が良くて、-30℃でも、もう他の暖房機は要りません等と、エアコンを叩き壊し、女性が下着になって、映像では激しく炎を吹きだしている、かなり危ないストーブの宣伝をしておりますが、316Wの電力では、この様な事は絶対にあり得ません。
ドイツ製の電力を90%削減する省エネチップと言うも、存在する訳が有りません。こんなチップが有ったら大発明で、発明した技術者は、即ノーベル賞です。

エアコンの熱効率が良いのは、電気による直接発熱では無く、熱交換器だからで、室内の冷気を表に捨てて、外気の熱を室内に取り込んでいるからです。

エアコンの室外機からは、夏季は熱い風が、冬季は冷たい風が出ている事から、室内の空気と熱交換している事が良く判ります。ですから室外機の無いエアコンも存在しません。
エアコンは、外気温が低くなると、外気から熱が取り込みにくくなるので、外気温が低くなり過ぎると、熱交換する効率が低下して、暖房の効きが難くなるわけです。

家庭用のエアコンの8畳用は、概ね1kW程度の消費電力ですが、暖房能力は、4kW程度の熱量が有ります。電気ヒーターの消費電力1kWは、発熱量も同じ1kWです。
どんな高性能のヒーターでも、間違いなく1kWの熱量です。
この1kWのヒーターが、1kWの消費電力のエアコンの熱量を超える事は絶対に有りません。
エアコンの代わりに、効率の良い新型の電気ヒーター等、絶対にあり得ない話なのです。

車の凍結防止

冬季になり、急に増えて来る物に、車の凍結防止、雪対策のオモチャが有ります。太陽電池で、車のウインドウが凍結すると起動して、10秒間ですばやく解凍すると言う物です。
これにも日本の自動車メーカーと、気象庁が共同で開発したと、名前が出て来ます。
マイクロ波で空気分子を激しく動かし、大量のエネルギーを発生させるそうですが、ガラスがガチガチに凍結した車を、直接太陽の当たる場所に置いても、なかなか解凍しません。
霜を削り取ったり、お湯をかけたり、エンジンをかけて温風でデフロストするのが実情です。

この製品は、太陽電池で充電しておき、車が凍結したら、自動的にマイクロ波を発生して、空気分子を振動させて、10秒間で霜を取ると言う製品です。凍結した霜を解凍するには、やってみると判る通り、大きなエネルギーが必要です。宣伝の映像では、みるみる霜が溶けて行きますが、小さなオモチャの様な太陽電池で、その様な大きなエネルギーは絶対に得られません。これは、小さな赤いLEDを点滅させたり、二重の輪をクルクル回して、芳香剤を広げるだけの機能しかありません。

マイクロ波で氷を解かすなら、電子レンジと同じ原理になります。これが可能なら、車内にいる人間の体温がマイクロ波で上昇して、体の中から火傷してしまいます。
凍結した車のウインドウの解凍が、本当に10秒で可能なら、これもノーベル賞です。

広告の中のレビューでは、小さくてとても良いとか、買って良かった。とても役に立っている等の記載が有りますが、広告している側が記載しているレビューですから、悪く書く筈も無く、これらは、全てが広告を出している側が自分書いた宣伝文句です。

ここには素晴らしく良い製品で、これは買って良かったとの表現しか出て決ません。

ネットで、この様な商品を実際に買ってしまった人が投稿した意見も見られますが、騙された、これは酷い、使い物にならない、捨ててしまった等の意見ばかりが見られます。
しかし返品して、返金させた話は、まだ見ておりません。

この様な素晴らしい性能の新発明のヒーターや、除霜装置が、いくらメーカーの直販の割引でも、数千円で手に入る筈は有りません。数千円程度の金額ですと、騙されたと判っても、日本人は大騒ぎしないで、また騙されたのかと、あきらめてしまうのでは無いでしょうか?

また、この程度の金額で、この性能なら、とりあえず試してみて、これが全部嘘で、まるで使えなかったら捨ててしまえば良いと、面白半分で、注文する方もいると思います。
この行為は、悪徳業者の財布に、お金を捨てる様な物です。

この外にも、家庭用品等、全ての分野で、明らかにおかしな広告を、数多く目にします。
私も物好きですから、ドイツ製の油無しでも焦げ付かないフライパンがネットの広告に有り、これは健康に良いかと思い注文しましたが、送られてきたのは、ボロ箱に日本には無い漢字が印刷されている、すごく良く焦げつくフライパンでした。

仕事でも、ネットで怪しげな会社に電子部品を注文したら、箱にしっかりと日本の会社名と住所、電話番号が記載されており、本物の製品の箱と印刷も全く同じ箱が届きました。
開梱して見ると、中の製品の高さが2~3ミリ違う事に気が付きました。
メーカーに問い合わせたら、そんなサイズはあり得ないし、箱に記載されている製造番号も、あり得ない番号だとの事でした。

高額な商品なので、販売店に製品が違うと返品と返金を申し入れましたが、間違いなく本物だから、動作不良でなければ返品は受け付けないと、片言の日本語で逃げ回り、なかなか話が付きませんでしたが、最終的には返品して、女性の個人名で返金されました。

数千円なら、騙されても、面倒なのであきらめてしまいますが、かなり高額の商品でしたから、頑張って返金させました。この部品は、弊社では高さが微妙に違うので、何か変だと気が付きましたが、正規の製品と並べて比較しなければ、高さ以外は、そっくりに作られており、正規の製品と並べてみないと判りません。高さも同じなら気が付かなかったと思います。

ここまでするかと思いますが、日本の製品は超一流品ですから、同じ形に偽造すれば売れる様です。これが偽物と気が付かずに、ここから仕入れて使用していた同業者も有りました。

この様な事例から考えると、悪徳業者は、お客様が面倒な返品をあきらめる様に、わざと数千円の価格設定をして、原価の安いインチキな製品を送り、お客様が面倒な返品をしない様にして、利益を得ているとしか考えられません。

広告に載っている写真と仕様で製品が気に入り、注文したら写真とはまるで違う物が送られて来たと言う話も良く聞きます。

気に入らなければ、返品、返金可能と記載されているので、着払いで返品したら、返品先の住所と電話番号がデタラメで、宛先が実在しないので、品物は発送者に戻り、着払い料金は自分で支払う結果になったと言う、二重に損害を受けた酷い話も聞きます。

皆様が少し知識を持たれて、騙されなければ、この様なインチキな商売は成立しません。
製品の写真を拡大して見ると、日本には無い漢字が見える事が有ります。

ネットには、この手の詐欺と思われる物件が実に多いのですが、あまりにも多過ぎて、取り締まりに手が回らないのか、メーカー側も名前を使われても、相手にせず放置しているのか、ずっと継続して同じ広告が出されています。
この問題は、現在の所、自己防衛するしか方法は無い様です。

取りあえず、注意する事は、販売会社の電話番号が、+86で始まる物です。これはC国の国際電話番号です。

最近は、日本らしい携帯の電話番号に、日本企業らしい名称を使用している様で、ここまでされると、何を信じたら良いのか、判りません。
しかし販売会社の電話番号が、携帯の番号と言うのは、怪し過ぎるので、注意が必要です。
日本国内に、会社の電話番号を携帯の番号にしている会社は、まず無いと思います。

C国の企業が全て悪いとは言えませんが、私は、かなりの確率で、かなり悪いと思っています。届いた商品が予想と違い過ぎて使い物にならず、捨ててしまった物は、沢山有ります。

善良な皆様には、十分に注意して頂きたいと思います。

 
 
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