
室内の騒音と振動
恒温恒湿室や環境試験室の室内の騒音と振動ついて解説します。
室内の騒音と振動
室内の騒音と振動
恒温恒湿室や、環境試験室では、室内の騒音と、室内の風の強さは、特に嫌われます。
弊社では、他社製品の改造や、空調機だけの交換工事を行っておりますが、中には、室内の騒音が大きくて、声を通常より大きくしないと、会話が出来ない試験室も有りました。
また、室内の風速については、精密天秤や、粉末、薄いフィルム等を取り扱う試験室では、特に風は嫌われます。対象物を衝立で囲って、風を防いでいる現場も有りました。
空調機を入替えると、室内が静かになり、温湿度の精度は上昇したのに、室内は微風速になって、消費電力も大幅に下がりますから、大変驚かれて、とても喜ばれております。
この改造や、空調機交換の実例を下記に示します。
他社装置の改造例1

左の写真は、パッケージエアコンを利用した恒温恒湿室です。
直接風を吹き出しており、エアコン下部にコンプレッサが内蔵されているタイプなので、騒音と振動がとても大きく、風も非常に強い装置でした。右上に見えているのは加湿器で、沸騰する音がポコポコと室内で聞こえる様な装置でした。
右下に有る小扉は、機械室の点検扉です。

このお部屋の騒音を測定すると、65.2dbも有りました。
この騒音値は、大きな交差点の中と同じ程度のレベルです。
信じられないでしょうが、この恒温恒湿室の室内では、大きな声を出さないと会話が出来ない程の騒音値でした。

左は改造後の写真です。天井から分散して吹出す方式に改造したので、この写真には吹出口は見えておりません。
加湿器は空調機内に2台が収納されており、自動交互洗浄方式です。メンテナンスは空調機の正面だけになり、右側の子扉の中には何も有りません。
騒音は、43.5dbに下がりました。これは病院内の騒音レベルです。
お客様が一番驚かれたのは、ノートパソコンの冷却ファンが、こんなにうるさい物だと感じる様になった事です。
他社装置の改造例2

これも他社製品を改造して低騒音にしたものですが、最初に下見をした時には、室内の騒音の大きさに驚かされました。
実際の空調機交換作業開始時には故障しており、残念ですが、騒音値は測定できませんでした。経験上の耳騒音計では、60dbを超える位の騒音であったと推測されました。
一般的な事務所の騒音基準値は、55db以下とされており、実際に測定した例では、50db台が多く有ります。
本試験室の改造後の騒音値は、45.9dbですから、かなり静かなオフィスの騒音値と同等のレベルにまで低下しました。
試験室内のお客様が、大変喜ばれた事例です。

これは、他社製の空調機を交換して、既存の他社制御盤の外側だけ再利用して、内部の部品を現場で交換して、省エネに改造した物です。
制御盤の上に載っているのが、気象庁検体付きの温湿度の測定器です。温湿度の精度を確認している所です。
既存の制御盤のパネル面の計器はそのまま再利用しており、。内部だけ改造して、省エネで高精度な制御が出来る様に改造しております。
改造前の実際の湿度の変動幅は、±2%でしたが、改造と空調機の交換により、±0.1%の高精度な制御になりました。

写真中央は気象庁検定付き温湿度測定器のセンサ部分です。
右奥に見えているのが、実際に使用されていたセンサです。
改造に当たり、センサや調節計は、そのまま再利用しており、空調機と制御方式を入替えただけですが、この様に温湿度の精度と、省エネ性は、飛躍的に向上しております。
試験室の価格は、メーカーにより大幅に異なりますが、精度は、製品の価格や、使用部品の価格の差ではなく、積み重ねた技術の差で有る事が、良く判る例です。
改造により、最小の費用で、最大の効果が得られています。
他社装置の改造例3

この空調機は、写真の様に室内から送風機のブレードが見えており、直接室内に送風しているので、室内は嵐の様でした。
吹出口には風向調整の大きなルーバーが有りますが、真ん中のごく一部にしか風が当たらないので、拡散ができず、他のき場所のルーバーの調整は全く無意味です。
騒音値は、86dbで、これは室内で、警報ブザーが鳴ってる様な状態です。とても連続で入室していられません。試験室とは言え、実際にこの様な酷い製品が納入され、使用されていた事にも驚きました。

これは、空調機のスペースと基本的な構造の問題が有りますから、空調機を改造しても、騒音値は、64dbまでしか下りませんでした。
それでも、お客様は、室内がかなり静かになり、精度も高くなり、消費電力が極端に少なくなったと、驚かれています。
低騒音な装置の例

これは防音室で、特に室内の低騒音を希望された試験室で、実際に、運転中の騒音を測定している写真です。
既存のコンクリートのお部屋の壁の全面に、グラスウールを張った防音仕様の試験室です。
測定器の表示面が暗くて見にくいのですが、33.9dbです。
以上、空調機の騒音の改善例を上げましたが、db (デシベル) と言われても、ピンとこないと言われます。一般的に、警報ブザーの規格が、90dbで、一般家庭の洗濯機や、トイレを流す音が、60db 、静かな事務所が50db、図書館で40db、深夜の郊外で、30db程度と表現をされると、判りやすいと思います。
空調機の振動
空調機の振動を心配されるお客様も、良くおられます。これは、旧式のエアコンを利用した空調機を使用している場合や、この様な装置を見た事が有るお客様が、特に心配されます。
古いエアコンにはコンプレッサを内蔵した機種が有ります。このコンプレッサは、ピストンが往復運動で、大きなクランクを回しますから、大きな騒音と、振動が発生します。
大型のエアコンでは、防振架台を使用しますが、恒温恒湿室に多く使用される5馬力程度ですと、エアコンを機械室にそのまま設置している例もあります。この方式では、空調機から発生する振動や騒音が気になりますから、試験室の室内に設置すると、騒音に悩まされて、とても静かな空調機にはなりません。
試験室の外に設置しても、振動が伝わりますから、フレキシブルなダクトを使用して試験室と離す必要が有り、この場合は、空調機の設置面積が、かなり大きくなります。
弊社の空調機は、冷凍機を使用しております。冷凍機は屋外に設置しています。冷凍機は、エアコンの室外機と呼ばれる物と、見た目は、同じ様な形をしております。
弊社の空調機の内部にコンプレッサは無く、振動する物は送風機と、DPC方式の場合には、小さなポンプしかありません。送風機のブレードにはバランサーが有り、ほとんど振動しません。また、送風機は、あえて大きな物を採用しており、この送風機の回転数を運転条件に合わせて、必要最小量に制御しておりますので、更に静かになります。
また、温度の移行時には回転を上げ、移行速度を速めております。
この為、空調機本体に手を触れても、ほとんど振動は感じません。空調機に耳を当てると、内部に回転している物が有る事が、判る程度です。