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湿度センサ

湿度センサの種類について紹介・解説します。

湿度センサ

湿度センサは、一言で言うと空気中の水分量を測定する部品です。絶対湿度と、相対湿度の表現がありますが、一般的には、相対湿度の方が使用され、%RHと表示しています。
湿度センサには、下記の様な種類が有ります。

毛髪式湿度センサ

湿気によって伸縮する毛髪を利用した物で、一般的な温湿度測定に、良く使用されています。
下の写真の様な、ダイヤル式やデジタル表示式が有り、これらは比較的に低価格です。
記録紙を円筒形に巻いて、ペンで温湿度を記録する、自記記録計等にも応用されています。応答速度が遅い、低湿度の測定ができない、経年変化が有る等の欠点は有りますが、価格が安いので、良く現場でも使用されておりますが、温度補正されていない湿度計の指示値は、常温常湿以外では、あまり正確ではありません。

恒温恒湿室で、自社の自記記録計と指示が合わないとのクレームが来る事が有りますが、これは、自記記録計側の精度に問題が有る場合が多く有ります。調節計と誤差が有る場合は、気象庁検定付きの測定器で測定した値に、補正する事が出来ます。

余談ですが、毛髪は未婚のフランス人女性の物が1番良く、黒髪は直線性が悪いそうです。
コストや、いろいろな問題で、現在は、馬のしっぽを利用していると言うのが通説です。

乾球湿球式センサ

右の様に、2本のアルコール温度計の片方にガーゼを巻いて、蒸留水で濡らしてやると、気化熱で湿球側の指示が低下します。ガーゼを巻いてない乾球温度と、ガーゼを巻いた湿球温度の差から、中心に表示された換算表で相対湿度を読み取る方式の物です。
かなり原始的な古い技術ですが、現在でも販売されており、高分子方式の様に、経年変化しない特徴が有ります。
湿球に当たる周囲の風の影響を受けるので、湿度の測定値は不正確です。

また、目盛りがアルコール温度計の取付板の方に有り、アルコール温度計側に有りませんので、指で強く温度計を押すと、温度計本体がずれて移動してしまうので、この形式の指示値は信頼できません。
湿球で一番問題になるのは、蒸留水とガーゼの管理です。水道水にはミネラルが含まれておりますので、ガーゼに固形物として残ります。絶対に水道水を使用してはいけません。

アスマン

原理は、乾球湿球式センサと同じです。片方の水銀温度計にガーゼを巻き、蒸留水で濡らしておき、ここに風速3~4m/secの風を当てると、気化熱で水銀温度計の指示が低下します。乾球と湿球の温度差から、換算表で湿度を読み取る方式の物です。通風量が一定なので、正確です。


かなり古い技術ですが、現在でもアスマンと言う名称で販売されており、経年変化しない、1番正確な湿度の検出方法です。気象検定付アスマンを購入すると、検定書に有効期限が記載されておりません。
有効期限の記載が無いのは、ドリフトがない事を証明しているようなものです。
しかし、数年前の検定書では、お客様が納得されませんので、弊社では、数年おきに再検定に出しておりますが、再検定後の成績表は、新品の時と全く同じで変化しておりません。

アスマンで一番問題になるのは、湿球ボットの蒸留水とガーゼの管理です。水道水にはミネラルが含まれておりますので、ガーゼに固形物として残ります。絶対に水道水は使用出来ません。必ず蒸留水を使用して、ガーゼの表面に、汚れや、固形物が無いかを点検します。
ガーゼは一重です。うっすらと水銀が見える状態にします。ガーゼをグルグル巻いてはいけません。管理の悪いアスマンは、湿球温度が下がらないので、湿度は実際より高めになります。アスマンの指示が、実際の相対湿度より低くなる事は、測定原理上、絶対にありません。
誤差の発生は、湿球のガーゼ汚れや、ガーゼの巻き過ぎで、湿球温度が下がらない為です。湿球管理の悪いアスマンの誤差は、必ず高い方にずれて表示されます。

高分子湿度センサ

これは電気(電子)式のセンサで、高分子膜を電極で挟んだもので、高分子膜が吸湿すると、厚みが増すので、静電容量が変化する性質を利用した物と、吸湿性のある電極を使用して、吸湿すると、電気抵抗が減少する性質を利用した物の二種類があります。

このほかにも、各種の検出方式があるようですが、現在比較的安価で市販されているセンサは、ほぼ、この二種類になります。
いずれも応答速度が速く、静電容量や抵抗値が直線的に変化するので、各種の測定器に使用されており、現在の湿度センサの大半がこの形式です。

弊社でも、試験室の運転条件に応じて、この測定原理の湿度センサを使用しております

欠点は、経年変化が有る事で、これは使用条件と、製品自体にもばらつきがあるようで、同じ様な条件でも、短期間にドリフトする場合と、何年も経年変化しない物があります。

右の写真は、現場で良く目にするポータブルの温湿度センサです。量産品で価格も安いので、良く使用されております。
量産品のメリットとして、特性が非常に安定しており、常温常湿付近であれば、新品時の誤差はほとんどありません。
数個並べても、ほぼ同じ値を示します。
但し、この方式の湿度センサには、経年変化が有りますので、古いセンサの場合は、2個並べて比較すると良いようです。

いずれの高分子センサでも、多湿の条件で連続使用すると、センサ自体が吸湿してしまうのか、感度か低下します。湿度調節計の指示は90%なのに、実際に室内の湿度は100%近くになり、室内に結露して、床がプールになった事例が、過去に何件もあります。

これをメーカーにクレームとして調査を依頼しても、センサが乾燥すると特性が元に戻りますから、送付中に乾燥してしまうのか、すべて異常は無いとして、返されています。

そこで、高温多湿の専用機では、湿度センサを正確に加熱して測定し、得られた値を正規の温度の指示に換算して表示する形式の輸入品のセンサを使用しております。
このセンサであれば、この高温多湿運転時のドリフトは無くなりますが、センサの価格は非常に高価で、国産の湿度センサの5倍以上の価格になります。
連続で高温多湿の運転を行う場合は、価格は高価になりますが、連続の多湿でもドリフトが来ませんので、高温多湿の連続運転仕様では、この形式のセンサをお勧めしています。

お部屋の四隅に、複数の湿度センサを配置したら、湿度分布が悪かったという苦情もありました。そこで、全部を1ヶ所に集めて測定してもらったら、指示が一致せず、これはセンサの誤差であったと、後からご認識されました。
相対湿度は、お部屋の中の温度分布が一定ならば、必ず同じ値を示します。
温度分布が良いのに、相対湿度の分布だけが悪くなる事は、絶対にありません
温度によってその空気に含まれる水分量が変わるので、相対湿度が変わるのです。
ちなみに、23℃/50%の運転条件の時、もしお部屋の温度分布が悪く、1℃の温度差があると、相対湿度は4%近くもずれます。精密な湿度制御が難しい理由がここに有ります。
精度で、温度±1℃/湿度±2%RHと言う仕様の要求は良く有りますが、温度が±1℃変動したら、湿度は±4%変動しますから、湿度を±2%にしたいなら、実際には、温度は±0.5℃にする必要が有る事になります。

お部屋の中の水分量(絶対湿度)は、水面の高さと同じで、何処でも同じ量ですが、温度が少し変わると、含む事が出来る水分の量が変わりますから、相対湿度が変わるのです。
相対湿度は、温度が上がると必ず低下して、温度が下がると必ず上昇します。

夏季にエアコンを運転すると、室内機から、ポタポタと水滴が落ちて来ますから、かなり除湿している事がわかります。これで相対湿度が落ちると考えたら、大間違いです。温度と絶対湿度は下がりますが、相対湿度は上昇します。この空気を再加熱する事で、相対湿度が低下します。この為、低温低湿度のお部屋は、冷蔵庫よりかなり消費電力が大きくなります。

冷やすだけの冷蔵庫の中は、野菜が乾燥しますから、湿度は低いと思われがちですが、実は、相対湿度は高いのです。温度を下げると、絶対湿度が低くなるから、乾燥してしまうのです。
冷蔵庫を低温実験室にしている例は多くありますが、室内では紙が湿気てふにゃふにゃになるので、鉛筆で紙に文字は書けません。これは、冷蔵庫内の相対湿度が高いからです。
絶対湿度が低くて、相対湿度が高いとは、何だか判り難い現象ですよね。

試験室の温湿度測定

右の写真は、実際の試験室の試運転調整時の物です。室内に見えるのは、気象庁検定付の温湿度測定器のハイグロステーションと通風型の温湿度センサです。
この様に、測定器の値と調節計の指示を確認して、誤差が有る場合は、補正してお引渡ししております。

定期点検時も、同様に精度を確認し、誤差が有れば補正して、成績表を提出しております。

 
 
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