
加湿器のトラブルと純水器
加湿器のスケール対策に導入される純水器ですが、
解決方法とは言えません。
加湿器のトラブルと純水器
一般的な恒温恒湿室や環境試験室の空調には、必ず加湿器が使用されております。一番多く使用されているのは、下の写真の様な電熱式の加湿器です。



このタイプは、内部洗浄の為に、定時的に熱湯が排出されますので、排水配管は、耐熱パイプが必要で、洗浄時には加湿が停止しますから、湿度が大きく乱れてしまいます。
水を沸騰させると、蒸発出来ないカルシウム、マグネシウム等のミネラルは加湿器内に残ります。これをスケールと呼んでいますが、濃縮するとこのスケールが蓄積するので、加湿器は、必ず定期的なオーバーホールが必要です。オーバーホールは、1年に2回程度行う必要があり、この為に、定期的に高額な保守費がかかります。
電極式の加湿器も使用されている事がありますが、電極は消耗品で有り、シリンダーも定期交換する必要が有ります。この加湿器も定期的に高額な保守費がかかります。
高額な費用がかかるからと、そのまま放置すれば、どのような加湿器でも、いずれは必ずスケールが蓄積して故障します。これは水を沸かす加湿器の宿命的な問題なのです。
加湿器メーカーにこの問題を相談すると、純水器を使用すれば、解決すると言われます。
純水器を採用すれば、確かにこのトラブルは減少しますが、今度は、この純水の保守に、多額の費用がかかります。これでは、加湿器トラブルの解決方法とは言えません。
実は、高額な保守費がかかる事は、ほとんどの場合、純水器の導入時には説明されません。後から、純水器には高額な再生費用がかかる事がわかり、皆様が驚かれるのです。
数坪の恒温恒湿室には、4kW程度の加湿器が良く使用されております。この加湿量の最大加湿量は、毎時5.2ℓ程度です。この加湿器の最大能力の半分で、湿度のバランスが取れたと仮定すると、1時間に2.6ℓの水を消費します。
かなり少ない水量に思えますが、24時間では、62.4ℓで、1年では、実に、22776ℓにもなります。加湿器から蒸発させる蒸気は純水です。この貴重な純水の大半は、冷却コイルで冷やされて凝縮しますから、水滴になって、冷却コイルからドレンパンに滴下しています。
この様に加湿器で発生させた純水の大半は無駄に捨てられています。ポタポタと空調機から流れ出ている排水の大半は、高価で、とても貴重な純水なのです。実に勿体ない話です。
良く現場で使用されている純水器を見ますと、参考の写真の様な、お手頃な10ℓタンクのタイプを多く見かけます。
この純水器の価格は、概ね15~20万円です。この純水器1台で得られる純水の総量は、1900ℓです。先ほどの加湿器の稼働率で計算すると、この純水器が飽和する迄の、使用出来る期間は、1900ℓ÷62.4ℓ≒30日です。
たった30日で、内部のイオン交換樹脂が飽和するので、定期的に純水器のメーカーに再生処理に出す必要が有り、これには数万円の高額な費用がかかります。
加湿器のトラブルが多くて、メーカーにクレームを言ったら、純水器を薦められたお客様は多くおられます。他に解決する方法が無いからです。
お客様は、工事費を含めて、30万円程度で、純水器の取付けが出来て、多発する加湿器のトラブルから解放されるのなら、安い買い物だと思い、純水器を採用される事になります。
この時に、純水器のイオン交換樹脂は、飽和するので、樹脂の再生が必要で、直ぐに飽和するとか、再生はメーカーに依頼しないと出来ないので、高額な費用がかかります等の説明はほとんどの場合は無く、導入してから、この事実を知って、大変驚かれる事になります。
純水を使用しなければ、加湿器の点検修理に多額の費用がかかり、純水器を採用すれば、イオン交換樹脂の再生に多額の費用がかかります。これでは解決方法と言えません。
この様に、加湿器を使用する恒温恒湿室や環境試験室は、あまりにも保守費用がかかるので、加湿器の使用を止めて、やむなくただの恒温室として使用されているお客を、実際の現場では、かなり多くお見受けしています。
試験室で実際に良く使用されているのは、カートリッジ式純水器で、写真の様な形状をしております。

浄水器でもスケールになるミネラル分が取れると言う説が有り、加湿器に浄水器を取付けている例も見た事が有ります。
浄水器で取れるのは、ゴミと塩素だけです。
浄水器は人が水を美味しく飲む為の物で、カルシウム、マグネシウム等のミネラル分は取れません。
浄水器を加湿器に取付けしても、スケールを防止する事には、全く意味が有りません。
写真の純水器には、前処理フィルタと、後処理のフィルタが取付けされています。
前処理は、塩素を取り除いて、イオン交換樹脂が塩素の影響を受ける事を防止する物で、後処理は、更に高い純度を得る為に使用されています。
純水器の写真には、ホースが見えていますが、通常、出口側は、解放で使用します。ここに加湿器を繋いでしまうと、2次側が閉鎖される事になり、カートリッジに直接水道の圧力がかかります。水道圧を減圧する等の対策をしないと、カートリッジのパッキンがはみ出し、漏水している現場も見ますので、給水する水道の圧力にも注意する必要が有ります。
純水器には、小さなメーターが付いており、ここで飽和した事を判断します。飽和したまま使用すれは、純水器使用前と同じで、加湿器の方にスケールが蓄積します。
飽和した内部のイオン交換樹脂は、メーカーに送って、再生する必要が有ります。この間は、純水器が無くなります。実際には、もう1本予備を買って、再生時には、取り替えないと、この間は、加湿器の方にスケールが蓄積する事になります。
スケールは、純水器の中か、加湿器の中か、どちらかに必ず蓄積します。いずれにしても、この保守には高額な費用がかかります。これではスケールの解決方法とは言えません。
メーカーに再生を依頼する費用は、概ね2~3万円程度かかります。依頼すれば更に高額になります。1ヵ月に1回程度ですが、この送料、手間を考えると、年間では、数十万円になりますから、もう加湿器の使用はやめようかと考えられるのは、無理の無い事です。
この様に、加湿器と純水器に関しては、いろいろな問題が有ります。
弊社には、加湿器を使用しない独自のDPC方式の恒温恒湿室も有りますので、この問題でお困りの場合は、別途に公開している、DPC方式の資料をご覧ください。
この方式は、工業用水や、井戸水で運転している例も有ります。
この外に、運転範囲の広い環境試験室では、加湿器が必要ですから、加湿器を2台空調機の中に組込み、運転中に全く条件を乱さずに、交互に洗浄しているCSC方式が有ります。

左の写真は、実際に弊社が空調機の中に組込んでいる加湿器です。構造が単純ですから故障が少なく、精度にも問題無く、価格が安いのも特徴です。
左は新品、真ん中はCSC方式で1年間使用した物で、右側は、洗浄しないで6ヵ月使用した物です。これは、温度ヒューズが溶断して、故障した物です。
スケールの蓄積状態が良く見える写真です。
この加湿器は、構造が簡単ですから、空調機から電線をつけたまま加湿器だけを取出して、オーバーホールも出来ますし、新品交換も容易に行えます。遠方のお客様では、加湿器の本体だけ発送して、ご自分や、工務課で交換された例も有ります。
この方法でも、完璧にスケールの防止は出来ておりませんが、とても長持ちしています。
また、加湿器が1台故障しても、残る片方がバックアップしますので、そのまま警報だけ、停止すれば、修理する迄は、そのまま安定した湿度で実験が継続できるメリットも有ります。
加湿器はトラブルメーカーで、どうしても故障が多いので、弊社では標準在庫品としており、即日発送が可能です。片方の1台だけでも運転が継続でき、お客様ご自身でも簡単に交換できる様に工夫しておりますから、特に遠方のお客様には喜ばれております。
故障して直ぐに連絡が有り、当日に発送したら、翌日には交換されて、もう稼働してますと、電話を戴いた例も有り、意外に簡単だったと驚かれており、大変喜ばれております。
この自動洗浄加湿器は、別途に公開しているCSC方式の資料をご覧ください。
また、工場内に純水を持っておられる大手企業様の場合は、この純水を使用すれば、加湿器のトラブルは、大幅に削減されます。
軟水器
下の写真は軟水器です。スケール対策として使用されている例は多く有ります。定期的に、内部の塩の追加が必要ですから、メンテナンス会社が定期点検をされている現場では、良く見かける方法です。
この軟水器もスケールの蓄積対策になります。緑色の袋は補充用の塩の袋です。
