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扇風機の風を冷たくする方法

夏によく見かける間違いについて解説します。

扇風機の風を冷たくする方法

近年の夏は、40℃を超える猛暑も有り、36℃を超える外気温も、ひと夏に数回は記録される様になりました。
この様な気温になると、扇風機の風も生ぬるく感じたり、熱く感じる事すら有りますから、とても扇風機で涼む様な気分にはなりません

人間の体温は、36℃台です。外気温が38℃にもなったら、この風を体に当てたら、逆に体温を上げてしまうのではないかと思われますが、人間は暑いと汗をかきますので、この様に生ぬるく感じる風でも、実際には、この汗が蒸発する時に発生する気化熱で冷やされます。
たとえ、体温より高い40℃の空気でも、汗が大量に出てきて、風が有れば、体温は上がりません。但し、風が無かったり、脱水して汗が止まると、熱中症になります。
風が無ければ、汗は蒸発し難くなるので、身体が濡れるだけで、身体は冷え難くなります。風の少ない場所では、気温は同じでも、とても暑く感じる訳です。

冷風扇と言う名称で、クーラーもどきの製品が販売されております。これは、扇風機を箱に入れて、この中の網で水を蒸発させて、気化熱で吹出温度を下げようとするものです。
確かに吹出温度は下がりますが、内部で水を蒸発させていますから、湿度は上昇します。
これでは、不快指数は変わりません。

冷たい風が出てくるのなら、室温は下げられるのではないかと思われますが、温度が下っても、湿度が上がりますから、空気の持つエネルギーは、何も変わりません。締め切った部屋では、かえって蒸し暑くなってしまいます。
冷風扇の宣伝では、吹出温度が下る事だけが強調されており、湿度が上がる事には触れられておりません。逆に、冬季は加湿器になりますと、都合の良い事だけが書いて有ります。
冷風扇は、クーラーの代わりには、絶対になりません。冬季は加湿器代わりにはなりますが、湿度の高い夏季にも加湿してどうするんだい、と言うお話です。

冷風扇も、お部屋を解放して使用すれば、庭に打ち水をしたのと同じで、湿度は拡散されますから、身体に当たる風だけは冷たく感じますが、部屋を冷房する効果は有りません。
冷風扇は昔からあり、デザインを変えては、あたかも効果の有る新製品の様に、繰り返して宣伝販売されて来ておりますが、基本原理は全く同じです。何も進化しておりません。
これだの機能なのに、価格の高い物も有ります。価格が高いと、効果が有る様に思いますが、正に、効果を期待させるのが目的の価格です。冷風扇の購入は無駄な出費になります。

夏になると、良くネットに出て来るのが、氷を使用して冷却する方法です。冷たい氷に風を当てれば、その風は冷たくなりますから、氷が溶ける迄は、冷房除湿効果が有ると言えます。
この方式を、ネットで説明している画像も夏季になると良く見受けます。この説明の中には、大きな説明の間違いが良く有ります。

1点は、氷から蒸発する蒸気は冷たいから、冷房効果が有ると言う説明です。
夏季に氷に風を当てても、蒸発はしません。空気中の水分が、冷たい氷に接触すると凝縮して、水になります。風が無いと、氷からあたかも蒸発しているように霧が見える事が有りますが、蒸発しているのでは無く、氷の周囲の空気が冷やされて、空気の中に入り込めなくなり、霧状に水があふれ出してきた姿が見えるだけです。風が有れば、霧は見えません。
蒸発するのなら、乗せていた器に溶けて残った水の量は減る筈ですが、実際には、空気中の水分を凝縮して水滴に替えていますから、残った水の重量は、氷の時より少し増えるのです。

氷が有る間は、冷却だけでなく、空気中の水分が水滴になるので、除湿効果も有ます。
クーラーから水滴がポタポタ落ちているのを見た事が有ると思いますが、空気中の水分を水に替えるのが、除湿です。湿度が高いと、温度が低くても、蒸し暑く感じます。
温度が高くても、除湿して湿度が下れば、汗が蒸発しやすくなりますから、涼しく感じます。

もう1点は、この方法は扇風機を使うだけなので、エアコンに比べて、消費電力は極端に少なく、非常に省エネで有ると言う説明です。
これには、氷を作る為の冷蔵庫の電気料金が考えられておりません。無料で氷は作れません。
氷に風を当てたら、氷は直ぐに溶けてします。新しい氷に交換したくても、家庭用の冷蔵庫では、短時間に大きな氷は作れません。大きな氷の塊は、コンビニで買えば高価です。

また、氷で冷やすから室温が下り、涼しくなるので、エアコンが要らなくなった等の記述も見られます。
一般的に、氷を作る為の冷蔵庫は、室内に設置されております。冷蔵庫は、水の熱を奪って氷を作る、一種の熱交換機です。奪った熱は、冷蔵庫の壁と後ろの放熱器から、室内に放出しています。
冷蔵庫で、室内に熱を放出しながら作った小さな氷で、冷蔵庫が置いて有るお部屋の温度を下げる事は、絶対に出来ません。消費した電力分だけ、室内の温度が上がります。
氷で部屋の温度が下ったので、エアコンが要らなくなった等の記述は、全くの嘘です。

ペットボトルを凍らせて、扇風機の前に置けば、少なくともこれに触れた風は、冷却除湿されます。ペットボトルを2本程度、お皿に乗せて扇風機の前に置けば、この間を通り抜ける空気は、氷が溶ける迄は、冷却除湿されます。
これを寝付くまで、枕元に置けば、顔や頭を冷やす事が出来ます。
人間は、首から上を冷やすと、身体は暑くても、涼しく感じると言われています。

ペットボトルを置いたお皿には、凝縮した水が溜まりますが、ここに溜まった水が、空気中から奪った水分です。除湿された事は、ここに溜まった水分量で判ります。
扇風機の風か強いと水はあまり溜まりませんが、風速が弱いとかなり水が溜まります。

ペットボトルは、意外に保温性が高く、裸の氷より長持ちします。逆に言えば、冷えにいので、凍るのが遅いです。アルミ製のボトルを使用すると、熱伝導が良いのですぐに凍りますし、空気も良く冷やせますが、溶けるのも早く、短時間でボトル内の氷は無くなります。

扇風機と氷を使用する方法では、この程度の事しか出来ませんので、絶対にエアコンの代わりにはなりません。

 
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