スポットクーラーで部屋は冷やせるか

一般的なエアコンには室外機が有ります。夏季の冷房時は、室内を室内機の冷媒で冷却して熱を奪い、熱を奪って上昇した冷媒の熱を、室外機のファンで屋外に放熱しています。
熱交換機ですから、室外機から出ている熱風は、室内から奪った熱です。

広い工場をエアコンで冷房するには、大きな冷房設備が必要ですから、高額な電気料金がかかります。そこで、人のいる場所に向けて、冷風を送る装置が、スポットクーラーです。スポットエアコンと呼ばれる事も有りますが、暖房する機能は無いので、クーラーです。
除湿機と同じで、冷却器と放熱器が一体になっており、家庭用は、正面に冷風の吹出口が有り、側面に吸込口、天井か背面に排気ダクトが有ります。業務用は本体正面に吸込口が有り、天井に2本のダクトが有ります。冷気ダクトから冷気を吹き出して、排気ダクトから熱気を放出しています。
この熱気の出る放熱ダクトを伸ばして、屋外に排気させて、冷気側のダクトだけを人のいる場所に向ければ、その場所をスポットで冷房する事が出来ます。

大きな工場では、暖気を外気に放出するには、長いダクトが必要ですから、ロスが大きくなり、風が出なくなりますから、延長はしないで、天井に向けるか、人のいない場所に向けています。熱い空気は軽くなるので、上昇して行き、天井の排気ファンで、屋外に排出されています。冷却すると、ドレンが発生しますから、スポットクーラーの底部にはポリタンクが有ります。これが満水になると、停止します。連続運転仕様とする為に、排水口にホースを繋いで、ドレンを付近のピットに排水して、連続運転している例も有ります。

それでは、小さなお部屋なら、スポットクーラーをルームエアコンの代わりに使用する事が出来るでしょうか？放熱ダクトを少し伸ばして、屋外に熱気を放出すれば、室内側に冷気だけ送れますので、通常のエアコンの変わりとして利用できそうです。

但し、一般的なスポットクーラーの吸込口は1ヶ所で、ここにフィルタが付いております。ここから給気した空気は、エアコンの内部で冷却器と放熱器に２分されて送られています。
つまり、室内の空気を吸い込んで、半分の空気は放熱の為に外部に捨ててしまっています。
するとスポットクーラーを置いたお部屋は陰圧になり、扉などの隙間から外気が入り込みます。スポットエアコンを表に出して、冷気だけ送っても、室内は冷気で陽圧になり、せっかく冷えた風を室内に送っても、扉等の隙間から押し出して捨ててしまう結果になります。
この為、大きなスポットクーラーでも、同じ程度の能力の小型エアコンと比較すると、実際に、室内を冷却する能力は少なくなります。
外気を給気するダクトを取付け出来るタイプも有りますが、背中に取付けするので、本体が前に出て、設置場所がダクトの分、広く必要になります。ダクトで距離を伸ばすので、効率も悪くなります。この為、スポットエアコンでは、部屋は思ったほど冷えません。
冷気の当たる所に入れば、涼しく感じる程度の冷房装置と考えた方が良さそうです。

近年は、キャンプがブームで、夏季は超小型のスポットクーラーをテントや車に積み込み、付属の排気ダクトを屋外に出して、熱気をテントや車外に放出して使用している使用例が見られます。
但し、クーラーから冷気をテントや車内に送っても、半分の空気を車内から吸って放熱側で外部に捨ててしまうので、室内は換気されてしまい、思う様には冷えません。
スポットクーラーを表に出して、冷気だけ室内に入れても、その分室内の空気を押し出して排気してしまうので、冷気は循環しません。
そこで新型の小型スポットクーラーは、放熱器用の給気ダクトと、排気ダクトの2本を車外に出す様に工夫されており、冷気だけ室内で循環させる様に改良されております。

冷風扇をスポットクーラーの様に宣伝している例も有ります。気化熱を利用して冷やすのですが、同時に加湿してしまうので、吹き出す空気の温度は確かに下がりますが、冷風扇で、お部屋を冷やす事は出来ません。湿度が上がるので、不快指数は変わりません。

タンクに水を入れて冷房と言うのは、クーラーではありません。クーラーは、除湿するので、タンクに除湿した水が溜まります。冷風扇は逆に蒸発させるので、タンクの水が減ります。
冷風扇は昔から有りますが、－10℃の風が吹き出すとか、現在でも、さも新しい技術の様に、とても上手に宣伝されていますから、騙されない様に、注意が必要です。