用語集(軟水器と純水器)
専門用語をわかりやすく解説します。
軟水器と純水器
恒温恒湿室や環境試験室に於いて、加湿器は最大のトラブルメーカーです。
水道水の中に含まれるカルシウムやマグネシウム等の成分は蒸発しない為、加湿器を長期間運転すると、ヒーターの周囲に蓄積して行き、やがて固形化して茶色い硬い塊になります。
この茶色い塊(スケール)が加湿ヒーターに蓄積すると、ヒーターと加湿水との熱交換を阻害するので、ヒーターの表面温度が上がります。こうなると、温度ヒューズの溶断、ピンホールが開いて、漏電の発生や、ヒーター本体が焼損する等の事故につながります。
井戸水等はこれらのミネラル成分が多いので硬水と呼ばれ、加湿器には使用出来ません。
水道は軟水と聞いておりましたが、完全な軟水では無く、水道局の原水が井戸水の地域や、井戸水混合の地域も有ります。この様な地域では、加湿器のトラブルが続出しています。
同じ加湿器で、同じ様な使用条件でも、地域によっては、寿命が大きく変わります。
加湿器の故障を防止するには、絶対に軟水か純水が必要ですから、トラブルの防止には何らかの方法で、水道水をできるだけ軟水に変化させるか、純水にして使用する必要が有ります。
加湿器のスケール蓄積を防止する為に、各社が自動排水等、いろいろな工夫をしておりますが、これらの方法で、完璧にスケールの蓄積問題を解決した例は有りません。
加湿器のトラブル発生率は高いので、これをメーカーに相談すると、軟水器か純水器の取付を薦められます。これらは、加湿器のトラブル防止には、確かにかなりの効果が有ります。
軟水器は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを、イオン交換樹脂でナトリウムイオンに置き換える物です。
下の写真は、軟水器の実装写真です。緑の袋には、再生用の塩が入っております。
右下に見える黒い箱は、加湿器から出る熱湯を冷却するタンクです。市販加湿器は、この様な工夫も必要です。
軟水器の内部にあるイオン交換樹脂は定時的に再生する必要が有り、再生には塩が必要です。塩は自然に減っていきますから、定期的に、必ず補充する必要が有ります。
軟水器は、担当者が変わると、塩の補給を忘れて、トラブルになる例が多く有ります。
メンテナンス会社が定期的に補充してくれる様な場合は、良いトラブル防止策になります。
純水器の使用
純水器も内部のイオン交換樹脂で、水中のイオンを全て取り除こうとするものです。
但し、イオン交換樹脂は飽和しますので、飽和する前に定期的に交換する必要が有ります。
純水器には、飽和度を示す小さなメーターが有り、飽和する前に、定期的にイオン交換樹脂を交換する必要が有ります。
純水器のイオン交換樹脂を定期交換する管理さえしっかり行えれば、加湿器内に、スケールと呼ばれる不純物が蓄積する事は有りません。
下の写真は、良く使用されているカートリッヂ式の純水器です。
浄水器でもスケールになるミネラル分が取れると言う説が有り、加湿器に浄水器を取付けている例も見た事が有ります。
浄水器の活性炭フィルタで取れるのは、ゴミと塩素だけです。浄水器は人が水を美味しく飲む為の物で、カルシウム、マグネシウム等のミネラル分は取れません。浄水器の取付は、加湿器に蓄積するスケールを防止する目的では、全く意味が有りません。
写真の純水器には、前処理フィルタと、後処理のフィルタが取付けされています。
前処理は、塩素を取り除いて、イオン交換樹脂が塩素の影響を受ける事を防止する物で、後処理は、更に高い純度を得る為に使用されています。
実は、純水器に高額な保守費がかかる事は、ほとんどの場合、導入時には説明されません。後から、純水器には高額な再生費用がかかる事がわかり、皆様が驚かれるのです。
一例をあげますと、数坪の恒温恒湿室には、4kW程度の加湿器が良く使用されております。この加湿量の最大加湿量は、毎時5.2ℓ程度です。この加湿器の最大能力の半分で、湿度のバランスが取れたと仮定すると、1時間に2.6ℓの水を消費します。
かなり少ない水量には思えますが、24時間では、62.4ℓで、1年では、実に、22776ℓにもなります。加湿器から蒸発させる蒸気は純水です。この貴重な純水の大半は、冷却コイルで冷やされて凝縮しますから、水滴になって、冷却コイルからドレンパンに滴下しています。
この様に加湿器で発生させた純水の大半は無駄に捨てられています。ポタポタと空調機から流れ出ている排水の大半は、高価で、とても貴重な純水なのです。実に勿体ない話です。
良く現場で使用されている純水器を見ますと、参考の写真の様な、お手頃な10ℓタンクのタイプを多く見かけます。
この純水器の価格は、概ね15~20万円です。この純水器1台で得られる純水の総量は、1900ℓです。先ほどの加湿器の稼働率で計算すると、この純水器が飽和する迄の、使用出来る期間は、1900ℓ÷62.4ℓ≒30日です。
たった30日で、内部のイオン交換樹脂が飽和するので、定期的に純水器のメーカーに再生処理に出す必要が有り、これには数万円の高額な費用がかかります。
加湿器のトラブルが多くて、試験室のメーカーにクレームを言ったら、純水器を薦められたお客様は多くおられます。他に解決する方法が無いからです。
お客様は、工事費を含めて、30万円程度で、純水器の取付けが出来て、多発する加湿器のトラブルから解放されるのなら、安い買い物だと思い、純水器を採用される事になります。
この時に、純水器のイオン交換樹脂は、飽和するので、樹脂の再生が必要で、直ぐに飽和するとか、再生はメーカーに依頼しないと出来ないので、高額な費用がかかりますとかの説明は、クレーム処理としては、都合の悪い話なので、ほとんどの場合は詳しく説明されません。
導入してから、この事実を知って、大変驚かれる事になります。
純水を使用しなければ、加湿器の点検修理に多額の費用がかかり、純水器を採用すれば、イオン交換樹脂の再生に多額の費用がかかります。これでは解決方法と言えません。
この様に、加湿器を使用する恒温恒湿室や環境試験室は、あまりにも保守費用がかかるので、加湿器の使用を止めて、やむなくただの恒温室として使用されているお客を、実際の現場では、かなり多くお見受けしています。
純水器の写真には、ホースが見えていますが、通常、出口側は、解放で使用します。ここに加湿器を繋いでしまうと、2次側が閉鎖される事になり、カートリッジに直接水道の圧力がかかります。水道圧を減圧する等の対策をしないと、カートリッジのパッキンがはみ出し、漏水している現場も見ますので、給水する水道の圧力にも注意する必要が有ります。
純水器には、小さなメーターが付いており、ここで飽和した事を判断します。飽和したまま使用すれは、純水器使用前と同じで、加湿器の方にスケールが蓄積します。
飽和した内部のイオン交換樹脂は、メーカーに送って、再生する必要が有ります。この間は、純水器が無くなります。実際には、もう1本予備を買って、再生時には、取り替えないと、この間は、加湿器の方にスケールが蓄積する事になります。
メーカーに再生を依頼する費用は、概ね2~3万円程度かかります。空調機を保守されている業者に依頼すれば、予備を持って来てくれて、お手軽ですが、交換料を含め、更に高額になります。1ヵ月に1回程度ですが、この送料、手間を考えると、年間では、数十万円~100万円台の経費がかかります。
加湿器に蓄積する不純物は、カルシウム・マグネシウム・シリカ等で、非常に硬く固形化します。これは基本的に定期的に削り取るしか方法は無く、この固形物を削り取る為にメーカーを呼ぶと、技術料、出張経費、消耗部品交換等で、高額なメンテナンス費用がかかります。
水を蒸発させる加湿器には、必ず蒸発出来ない不純物が蓄積します。これは宿命です。
ミネラル分が、加湿器の内部に溜まるか、純水器の中に溜まるかの差で有って、いずれは、どちらかに、必ず蓄積します。
加湿器のスケール対策は、どちらの方法を選択しても、高額な費用がかかる事には変わりは有りません。これでは完全な解決策とは言えません。
トラブルの多さに加湿器の使用をあきらめて、恒温恒湿室を湿度制御の出来ないただの恒温室として使用されているお客様もかなりおられます。加湿器と純水器に関しては、この様に、いろいろな問題が有る事が、ご理解いただけたと思います。
弊社開発のDPC方式は、お湯を沸かさず、冷水で除湿加湿する方式です。純水器は不要で、この方式は硬水の井戸水で運転している実績も有ります。
DPC方式は、トラブルメーカーの加湿器を使用しない方式なので、非常に故障が少ない空調機です。メンテナンス無しで10年間の無故障記録は良く有り、最高記録は21年間の無故障記録が出ています。他の空調方式では、絶対にあり得ない記録だと思います。
DPC方式は消費電力が少ないだけでなく、夏季は除湿するだけで、設定値で安定した湿度が得られます、夏季は一滴の水道水も消費しません。他社製品から入替られたお客様は大変驚かれます。
スケール問題でお困りの場合は、ぜひDPC方式をご検討いただきたいと思います。
DPC方式は、低温での加湿は、冷却水が凍結しますから出来ません。運転範囲の広い環境試験室では、一般的な冷却コイルを使用した、弊社独自のCSC方式で対応しております。
この方式は、冷却、加熱、除湿、加湿の4信号を比較して省エネに制御する方式で、とても省エネです。また、加湿器の稼働率が低く、夏季は必要量の除湿を行って条件を得ますから、加湿する必要も有りません。究極の省エネ運転を行います。
また、運転中に、湿度を乱さずに、2台の加湿器を交互に洗浄する方式なので、特に加湿器の故障が少ない方式です。
これらの詳細は、ホームページ上で、詳しく説明しておりますので、こちらをご参照下さい。
但し、DPC方式、CSC方式は、弊社で独自に開発して、製造販売している空調機ですから、他社にこの名称は有りません。他社に問い合わせされても、何の事か判りません。