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恒温恒湿室の加湿器 選定方法・使用方法を解説!

加湿器のトラブルが多い恒温恒湿室。
一般的な選定方法や弊社の使用方法を解説します。

恒温恒湿室の加湿器 選定方法・使用方法を解説!

恒温恒湿室に使用する加湿器の考察

恒温恒湿室に使用される加湿器には各種ありますが、超音波方式と水のスプレー方式を除いては、いずれも水を蒸発させて湿度を得る方法です。
この方式の場合はどの様な機種であっても、蒸発できないカルシウム、マグネシウム、シリカ等が加湿器の中に必ず残ります。
これをスケールと呼んでいます。これは加湿器の宿命的なトラブルで、純水を使用しない限り必ず発生します。加湿器は、恒温恒湿室に於ける最大のトラブルメーカーと言えます。

この内、超音波方式とスプレー方式は、室内に水道水のミネラル分を含んだ水をそのまま噴霧します。
ミネラルを含んだ霧は室内に漂い、室内の壁や什器に付着して固形化するので、室内がザラザラになります。多湿運転をしようとすると、蒸発しきれない霧が周囲を濡らす事も有ります。ミネラルが乾燥して付着するザラザラは簡単に取れません。
また、ダクト内で加湿すると周囲が濡れたままになるので、タクト中にカビが発生します。加湿器内部にスケールは蓄積しませんが、吹出したミネラルのザラザラは室内の精密機器に付着します。制御性もON-OFFですから非常に悪く、恒温恒湿室の加湿器としては論外です。

超音波加湿器は省エネであると宣伝されていますが、霧が蒸発する時には気化熱を奪いますから室温が低下します。その分、加熱ヒーターが働きますから、けして省エネでは無いのです。霧を発生させる超音波素子が省エネなだけです。
また、超音波素子の寿命は3000~5000時間程度ですから、連続運転では4ヵ月~半年程度で故障する素子も出ます。また、超音波加湿器は長期間運転を休止すると、加湿器の水槽内にカビやレジオネラ菌が繁殖する場合が有ります。この加湿器を再運転すると、これらの菌を霧にして室内に噴霧する事になり、健康的にも大きな問題が有る加湿器なのです。

制御性が良いのは電極式と電熱式加湿器ですが、電極式は電極が消耗しますし、樹脂のタンクも消耗品ですから、必ず定期的に保守費がかかります。これが意外に高額です。
電熱式は、水中のミネラル分が少なければ非常に長持ちします。シーズヒーターで水を加熱し沸騰させて加湿しますから、衛生的な加湿方法です。但し、ヒーターの周囲には蒸発出来ないミネラルが蓄積して固形化します。これをスケールと呼びます。固形化するとヒーターと水が直接接触しなくなり、熱伝導が悪くなります。すると、加湿用のシーズヒーターの表面にピンホールが開き、ヒーターの内部に水が浸入して漏電する事も有ります。

これを未然に防ぐために、加湿器には温度ヒューズがヒーターの根元に入っております。
ヒーターの周囲温度が上昇すると温度ヒューズが溶断して警報を出し、ヒーターを遮断して保護しております。この様な加湿器は、蓄積したスケールを削り落として温度ヒューズを交換すれば、再使用する事ができます。加湿器メーカーに修理を依頼するとこれをオーバーホールと称して出張費、技術料を含み、かなり高額な請求をされます。但し、加湿器は新品でもトラブルが多い物なので、オーバーホール品の保証はされません。

この他に、加湿器の水位を設定しているのはボールタップか電極、フロートSW等ですが、ボールタップやフロートの周囲にまでスケールが付着するとこの動きそのものが渋くなり、引っかかるとこれも故障の原因になります。断水等で水位が低下するとボールタップが下がり、ロッドの根本にあるリミットスイッチが働くか、フロートのスイッチが働いて低水位警報を出してヒーターを遮断します。
ロッドやフロートのわずかな動きで低水位を検出していますから、場合によってはヒーターを遮断するのが遅くなり、温度ヒューズが先に溶断してしまう例もあります。

また給水が復帰しても、ボールタップやフロートにスケールが少しでも付着していると、これにボールあるいはフロートが引っかかり上昇でき無くなり、低水位の警報が出たままになって異常停止したままになる事もあります。逆に断水しても、ボールタップやフロートが下らずに空焚きとなる例も有ります。これらの現象は、断水した後に時々発生する事があります。加湿器が低水位になって警報が出たが温度ヒューズは切れていないといった場合は、これらが原因です。この現象はちょっと振動させたり、ボールタップやフロートに触るとすぐに復帰してしまうので再現性が低く、原因が判断しにくい故障になります。

この様に、加湿器は水道水の硬度が高い(ミネラルが多い)と故障が多発します。
この為に、井戸水や工業用水は加湿器には使えません。事前に加湿器に使用する水が、水道水である事を確認する必要があります。また設置場所の関係で、井戸水や工業用水しか利用できない場合も有ります。この場合は、弊社では冷水で加湿する独自のDPC方式をお勧めしております。この方式は冷水加湿ですが、冷却水を定時置換して濃縮させないので、井戸水であってもスケールが固形化しません。井戸水や工業用水でも特に問題なく長期間の運転をしている現場も有ります。

納入先が遠方の場合は加湿器が故障しますと修理費が高くなりますから、弊社では可能な限り、恒温恒湿室の場合はDPC方式をお勧めしております。DPC方式は他社のエアコンを流用した空調装置より、ステンレスの水槽やコイルが有る為にどうしても少し高額になります。但しトラブルメーカーの加湿器が無いので、非常に故障が少ない装置です。
また消費電力、消費水量が少ないので、イニシャルコストの差は1年程度で回収出来ております。

弊社のCSC方式では、一般的な他社の空調方式と同様に加湿器を使用しております。価格は少しお安くなりますが、純水器を使用しないと加湿器のトラブルはいずれ発生します。
他社では加湿器のトラブルが発生すると、トラブル防止の為に純水器を使用する事を薦められます。確かに加湿器の故障は減りますが、今度は純水器の保守に費用がかかります。
一般の空調方式では、加湿器を保守するか、純水器を管理するかのいずれかの対策が必要になります。
いずれの方式にしても、湿度を管理する為には高額な費用がかかります。

たとえば、5kWの加湿器の加湿量は6.5ℓ/hになります。
加湿器の稼働率を60%と仮定すると、1時間の純水使用量は約4ℓになります。
良く使用されている純水器のイオン交換樹脂が10ℓを使用すると、処理水量は2800ℓになります。
すると運転可能時間は2800÷4=700時間で、連続運転すると700÷24=29日です。
10ℓのカートリッヂ式の純水器では、わずか1か月で飽和する事になります。

イオン交換樹脂の交換には数万円の費用がかかります。加湿器トラブルで純水器を薦められても、この時に交換費用の事は説明されません。純水器を取り付けてから保守費用の高さに驚かれるのです。恒温恒湿室で湿度を管理するには、加湿器の定期的な修理か、イオン交換樹脂の保守か、いずれかが必要で、いずれにしても高額な保守費が必要になります。
あまり保守費がかかるので加湿器の使用をあきらめて、恒温恒湿室をただの恒温室として利用されているお客様はかなりお見受けします。加湿器を停止させると、一般的な空調機では室内は低湿度になりますから、今度は極端な乾燥による健康面や静電気が問題になって来ます。

恒温恒湿室を導入される際は、消費電力は比較検討の対象になりますが、業者からこの様に加湿器に大きな経費の掛かる事は説明されません。導入して初めて気が付き、保守経費の高さに愕然とされるのです。

従来のPID方式と呼ばれる空調方式は、冷凍機を定格で運転した状態で、低下した温度をヒーターで再加熱しています。すると除湿されてしまいますから、加湿器も大きく働きます。特に冬季は外気の湿度が低下しますから、大量の加湿が必要になります。冬季でも定格能力で冷却しますから、ドレン水はポタポタと出て来ます。これは蒸留水です。
これを見れば、PID方式はいかに無駄な制御であるかご理解いただけると思います。PID方式は冬季の消費電力が大きくなり、加湿器の稼働率も上がりますから、故障が多発します。純水器を採用すれば、今度はイオン交換樹脂の交換費が高額になってしまうのです。
そこで弊社のCSC方式の恒温恒湿室では、下記の様な対策を行っております。

まず御希望の温湿度を得る為に、必要最小限の冷却除湿を行います。すると再加熱・再加湿する電力は、その条件を保持するに必要な量しか働きません。実績的には、従来の装置を弊社CSC方式に入れ替えた場合、消費電力は平均的に1/4程度に低下しています。こんな事はあり得ないとのお話も有りますから、省エネ化の改造をした実績の資料は別途公開しております。
省エネ化についての実績資料は、そちらをご覧ください。

加湿器の稼働率が必要最小限に下がると言う事は、消費電力が下がるだけではなく、加湿器のスケール蓄積も少なくなります。その改造だけでも、加湿器は長持ちします。しかし、スケールの蓄積が完全防止できるわけではありませんので、いずれは故障します。
水道水であっても軟水とは限りません。水道局の原水が井戸水混合と言う所が有ります。この様な地区では、短期間で加湿器のトラブルが発生します。
近年になり納入台数が増えますと、水道水なのに1年程度でスケールダウンする現場が現れて、不思議に思っておりました。全く同一の運転条件の恒温恒湿室で水道水なのに、加湿器が故障しない現場と故障した加湿器を交換してもすぐにダウンする現場が現れました。そこで水道局を調べましたが、水道水であっても原水が井戸水あるいは井戸水混合で、かなり硬度の高い水道局がある事が判り、加湿器トラブルはその地域で発生していました。

このように水道水であってもトラブルが出ましたので、加湿器は当初は1台でしたが、その後2台の交互洗浄方式を開発いたしました。交互洗浄ですと、運転中に洗浄しても湿度は全く乱れません。洗浄回数が多く設定できますから不純物の濃縮防止になり、現在はこの方式を標準としています。
加湿器の洗浄は、標準では2~4時間毎に交互洗浄させておりますが、タイマーの設定時間を詰めれば1時間毎でも、30分毎でも洗浄は可能になります。純水と異なり水道水は価格が安いので、洗浄回数を増やしてもトイレの洗浄水量より少なく、費用的な問題にはなりません。洗浄回数を増やしても、水道水の硬度が高いと運転中にヒーターの周囲に薄くスケールが付着して、だんだん固形化します。定期洗浄してもこれは落とせないので、どうしても蓄積してゆきます。
洗浄方式は保守時間が延びるだけで、完全にスケール蓄積の防止はできておりません。

空調機内部に加湿器を2台組込み、これを軽く働かせて運転中に交互に洗浄する場合、1台の洗浄中は残る1台がバックアップしますから、湿度は全く乱れません。この方式は1台の加湿器が故障しても、このスイッチを切れば警報は停止します。運転条件はそのまま保持しますから実験を中止する事は無く、片肺運転のままでその実験が継続出来るメリットも有ります。但し小型の恒温恒湿室では、加湿器が1台のタイプも有ります。この場合、洗浄で湿度が低下すると、直ぐに除湿量が反応して低下します。この制御で、洗浄に伴う湿度の乱れは1~2%程度で収まっています。洗浄中の湿度低下や再沸騰時の急激な湿度上昇は、CSC方式は除湿能力を同時に制御する事で防止しております。運転中でも精度には全く影響なく、洗浄を繰り返し行えます。
一般的なPID方式の空調機では、運転中に加湿器を洗浄でもしたら加湿が停止するので、湿度が急激に低下してしまいます。その後、再沸騰すると、今度は大きなオーバーシュートが発生します。いつでも高精度を要求される恒温恒湿室では、このような制御では無理です。この運転中に湿度を乱さない自動洗浄方式は、弊社CSC方式だけになります。

弊社CSC方式は、この様な対策で消費電力が少なく、保守経費も少なく、加湿器の故障が少ない空調装置を実現しております。それでも、加湿器のトラブル発生を完全には回避しておりません。水質によって異なりますが、いずれ加湿器の修理、交換が必要になります。加湿器の交換作業を簡単にする為に、弊社の装置はスパナと+ドライバーだけで、簡単に交換が出来る様に工夫しております。女性の担当者が、ご自分で交換した例も有ります。
特に遠望のお客様の場合、メーカーに依頼しますと出張費、交通費、宿泊費で数十万円の請求が来ます。
ご自分で交換されるか、工務に依頼して交換されれば、これらの経費は全く掛かりません。加湿器のトラブルは多いので、弊社では常に在庫を持っております。連絡が有れば即日発送が可能ですから、翌日には到着、電話した翌日にもう修理された例も有り、「お陰様でもう再稼働しています」と喜びのメールも良く戴きます。取り外した加湿器はスケールを取り除く清掃作業を行い、温度ヒューズを交換すれば予備品になります。
保管しておけば、次のトラブル時にはそのまま再利用が出来ます。この方法も、その後の修理費用が掛からないので大きなメリットになります。

加湿器は通常の水道水であっても、洗浄しないと6か月程度でスケールダウンします。
井戸水の場合は、頻繁に洗浄しても6か月程度でスケールダウンしますから、井戸水は加湿器に使用出来ません。井戸水しか無い場合は、DPC方式をお薦めします。
加湿器方式では必ずトラブルが多発する原因になり、経費の無駄遣いになります。加湿器のスケール対策で、高級なフィルタを取付けされているお客様もおられますが、各種のフィルタ類ではゴミは取り除けますが、ミネラル分は取り除く事はできません。どんなフィルタを取付しても、スケール対策では全く意味がありません。純水器を取り付けすれば完璧ですが、スケールは加湿器に蓄積するか、純水器に蓄積するかどちらかの差であって、その保守費は加湿器よりも純水器の方が高くなります。

加湿器のスケール防止には、軟水器も有ります。
軟水器は、水中のカルシウムやマグネシウムはナトリウムイオンに置換させますから、とりあえず水道水の硬度そのものは下がり、スケールはヒーターに蓄積し難くなります。但し、カルシウム、マグネシウムは取り除くのではなくナトリウムイオンに置換するだけですから、このイオン濃度が上がります。硬度の高い水では、濃縮されてナトリウムイオンの濃度が上昇しますから、加湿器が泡立ってしまうフオーミング現象が発生するので、これがまた問題になります。また、シリカは軟水器では置換できないので、シリカが多いとそのままスケールとして蓄積してしまいます。加湿器に蓄積しているスケールが茶色の場合はカルシウムやマグネシウム類ですから、これはナトリウムイオンに置換されます。
スケールが白っぽい色の場合はシリカ分が多いので、軟水器を設置してもシリカは蓄積するので効果はありません。
弊社は、このような実例と長い経験から、経費の掛からない水道水の置換にこだわり、純水器や軟水器等を使用しないで一番費用の安い自動洗浄方式を開発して来ました。純水器の様に完璧ではありませんが、水道局が軟水に近い水を供給していれば5年以上は問題なく加湿器は運転しております。それでも、恒温恒湿室の故障原因の80%以上は加湿器が占めている現状があります。

現場に井戸水しか無い場合、あるいは水道の硬度が高く、他の装置でも加湿器のトラブルが続出している場合は、絶対にDPC方式がお薦めです。DPC方式は10年以上の無故障はよくある事で、最高記録はメンテナンス無しで21年間の無故障記録が出ております。恒温恒湿室の新設、既存の恒温恒湿室の改造計画等がありましたら、DPC方式もご検討いただきたいと思います。
DPC方式は、冷水で除湿加湿させています。イニシャルコストは少し高いのですが、運転経費が安く、非常に故障が少ないので、保守費がほとんど不要になるメリットがあります。制御性は極めて高く、長い目で見ればかなり経済的な装置です。

加湿器は一般空調用の普及品でも、単体の高級品でも、制御性は変わりません。
スケールはいずれにしても、純水器を使用しない限り蓄積します。メンテナンスは普及品の方が簡単ですから、弊社は普及品を改造して使用しております。
以下に実際の加湿器の写真を添付します。

左から:新品の状態、自動洗浄で1年使用、洗浄無しで半年使用

左から:新品の状態、自動洗浄で1年使用、洗浄無しで半年使用

弊社CSC方式は運転中に2台の加湿器を交互に洗浄しておりますから、洗浄時も湿度は乱れません。
また1台が故障しても、残りの1台で湿度条件が保持できます。

右の写真の左側は、自動洗浄方式で3年半使用した加湿器です。
右側は、回収した加湿器をオーバーホールした物です。加湿器の交換はとても簡単ですから、交換した新品の加湿器が再び故障した時には、オーバーホールした加湿器を再利用する事も可能です。但し、オーバーホールした加湿器の1年間の保証は行っておりません。

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