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室内人員と換気

過剰な換気は無駄な電力の消費に繋がるため
エコではありません。
どのような基準で換気量を決めたら良いのか、
実例と共に解説します。

室内人員と換気

試験室では、室内に入室している人員で換気量の計算をしています。
建築基準法の規定では、換気量は「一人当たり1時間に付き20㎥」と定められております。これは、室内に座っている状態の人間から発生するCO2(二酸化炭素)の発生量から定められた基準で、室内のCO2濃度を1000ppm以下に保つのに必要な換気量です。

ビル衛生管理法では、「一人当たり1時間に付き30㎥」の換気が必要と示されております。これは、不特定の人員が出入りする販売店や飲食店、ホール等ではCO(一酸化炭素)の発生やホコリや臭いの発生、感染症予防等の為に定められた値で、建築基準法より少し大きな値になっております。
空気調和・衛生工学規定でも、「一人当たり1時間に付き30㎥」の換気量が必要と示しております。

恒温恒湿室の換気

恒温恒湿室では、「一人当たり1時間に付き30㎥」を基準に換気量を決定しています。
但し、夏季や冬季では換気はかなりの負荷になりますから、必要以上の人員を想定して空調機を計画すると、誰もいないお部屋に大量の換気をする事になりますから、無駄な電力を消費します。

数人が入室する試験室では小さな給気孔と排気孔を取付けて、空調機内の送風機の差圧を利用して30~60㎥程度の換気を常時行う様にしています。給気孔にはシャッターがあり、入室者が居ない場合は、シャッターを閉じれば換気を停止させる事も出来ます。恒温恒湿室は完全密閉では無いので、10~20㎥程度は空気漏れによって自然換気されています。

空調機の壁の陰圧部分に取付けた給気孔の例
空調機の壁の陰圧部分に取付けた給気孔の例

上の写真は空調機の壁の陰圧部分に取付けた給気孔の例です。75~100φで、シャッター付きです。排気孔はお部屋側に取付けており、こちら側にはシャッターは有りません。

90㎥以上の換気が必要な場合は送風機の差圧だけでは足りませんので、給気押込ファンを使用して、フィルタを通して設置場所の外気を押し込んでいます。
入室者が不在の場合や人数が少ない場合は、手動のボリウムで給気ファンの回転を落として、換気量を減らせる構造としています。入室者数に合わせて換気量を調整すれば、省エネな運転が可能です。
下の写真は給気押込ファンを空調機に内蔵した例です。給気孔のフィルタは取り外して清掃ができます。

給気押込ファンを空調機に内蔵した例
給気押込ファンを空調機に内蔵した例

恒温恒湿室は建屋の中に設置される例が多く、近年はほとんどの建屋は空調されて換気されておりますから、一般的に換気は建物内から給気して、建物内の反対側から排気する方法を取っております。この方法ですと換気は大きな負荷になりませんので、換気量が多くても省エネな運転になります。

建物の外から大量に給気を取る場合も有りますが、換気量が多くなると冬季と夏季の侵入熱量が大きく異なり、空調機にとっては大きな負荷になりますから、給気専用のプレ空調機を設けて前処理している場合も有ります。この場合は、外気専用のフィルタも設けております。

大量に給気させる為の給気処理装置の例
差圧ダンパー

左の写真は、大量に給気させる為の給気処理装置の例です。
外気をダクトで給気して、粗フィルタと中性能フィルタの2段のフィルタを通しております。処理された外気は、下部に見える送風機で左側の空調機の吸込側に押し込んでおります。
給気量は制御盤面のボリウムで、自由に可変ができます。大幅に給気量が変わるので、排気側は差圧ダンパーとして室内を微陽圧に保ち、他の開口部からは空気を吸わない様にしています。

この他には、ロール状のフィルタを少しずつ送り出して給気フィルタの詰まりを防止する方法も有りますが、給気装置が大きくなるので弊社での施工例は1件しかありません。

外気押込ファンにより室内は陽圧となりますから、室内からは右の写真の様な差圧ダンパーで排気しております。
給気量を増やすとダンパーが開き、室内は一定の微陽圧に保持されます。給気を止めるとダンパーは閉じて、お部屋は閉鎖されます。

入室する人員が実験の目的により、大幅に変化する試験室も有ります。その度に換気量を室内人員に合わせて、手動で変えるのは面倒です。
そこで、CO2濃度計とインバータを組み合わせて室内のCO2濃度を測定し、設定された値を保つ様に自動で換気量を可変としている例も有ります。

環境試験室の換気

温湿度の運転範囲が広い環境試験室では、過酷な条件の時の換気は大きな問題になります。
低温で換気すると消費電力が増えますし、冷却コイルの着霜が一番の問題になります。また高温多湿では、排気させると排気孔だけでなく設置した場所の壁にも結露が発生します。

試験室には関係者以外は入室しないし、過酷な条件では長時間滞在する事も少ないので、過酷な条件の環境試験室では、換気量は「一人当たり1時間に付き20㎥」で設計しております。人はときどきしか入室しない場合では、換気をしていない例も有ります。その分、価格は安くなります。

一般的には、マイナスの温度域では換気を停止させています。マイナスのお部屋は寒過ぎるので、連続で入室する事はまず無いであろうと言う考え方からです。また、マイナスの温度で換気すると冷却コイルの着霜が激しくなりますから、連続運転は出来ません。低温で換気が必要な場合は弊社DCS方式を採用する等の対策が必要で、これはコスト高になります。

また運転温湿度範囲が広く、過酷な条件で、人の入らない実験の場合は、その条件の運転時だけ電動ダンパーで給排気孔を閉鎖して、人の入る条件の時だけ電動ダンパーを開いて換気している例も有ります。

右の写真は、高温多湿運転で屋内に排気をする場合の対策です。奥に見えているパイプは、加湿用の保温パイプです。
手前の排気孔の外側に設置したステンレス板の内側に結露させて、下部のドレン受けに水滴を落としております。排水はホースで、下部の排水口に排水させています。

逆に低温運転での排気では、ステンレス板の外側に結露します。マイナス温度の場合は、ここを加熱して排気させています。

完全密閉のお部屋では、温度が変わるとお部屋の中の圧力が変わります。扉が閉まり難くなったり、開きにくくなったりしますから、この場合は凍結防止ヒーター入りの圧力調整弁を取付けしています。

高温多湿運転で屋内に排気をする場合の対策

室内の酸素と炭酸ガス濃度

試験室は密閉されたお部屋になりますから、室内の酸素濃度を心配されるお話も出ます。
閉鎖されたお部屋に人が入ると、CO2濃度が上がります。環境基準は1000ppmですが、この濃度ではほとんどの人は気が付きません。2000ppmになると、空気の悪い事に気が付きます。5000ppmになると頭が痛く、気分が悪くなるので空気がかなり悪い事に気が付き、ご自分でお部屋の外に出て行ってしまいます。

大気中の酸素濃度は一般的に21%と言われておりますが、CO2濃度が5000ppmに上昇しても酸素と測定する単位が違うので、CO2濃度が上昇しても呼吸だけでは酸素濃度は低下しません。
酸素濃度の警報基準は18%です。CO2濃度が18%以下に低下すると階段を登っては脱出が出来なくなると教育されましたが、実際には教育者を含めてほとんどの方が酸欠の経験は有りません。
私は実際の低酸素室で15%の酸素濃度を経験しております。18%以下ではロウソクの火は消えますが、酸欠状態だけでは全く苦しく無いので、静かにしていれば酸欠になっている事に気が付きません。また、この室内のトレッドミル(ルームランナー)で走る事も、トレーニング用ルームバイク(自転車)を漕ぐ事も可能です。この時は脈拍が上がり、呼吸が激しくなりますから、少し空気が薄いかなと言う感覚です。

室内でガスを使用して、これが大量に漏洩しない限り、一般の試験室では酸素濃度は危険な程に低下しません。酸素濃度計は必要無いと考えております。
またマイナスの温度等、過酷な条件のお部屋でガス濃度を測定する場合は、サンブリング装置で室内の空気を吸引して、常温付近に戻して測定する必要が有ります。これには高額な費用がかかります。

 
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