前室は必要か
恒温恒湿室・環境試験室の前室について必要性の有無や効果を解説します。
前室は必要か
恒温恒湿室の前室
古い恒温恒湿室では、前室を設け、空調した空気を出入口から逃がさない様に、前室を設置している例が多く有りました。
当時の制御には時間遅れが有り、空調された空気が逃げると、大きく室内の温湿度が乱れて、この復旧には、かなり時間がかかったからです。
弊社の現在の空調方式では、応答性が非常に速いので、人が出入りしても、ほとんど室内の温湿度は変動しません。扉をしばらく解放すれば、季節によっては大きく乱れますが、扉を閉じれば最大能力で運転して、直ぐに復旧するので、恒温恒湿室に前室は必要有りません。
環境試験室の前室
環境試験室で、低温運転を行うと、室内の空気は重くなりますから、扉を開けると、床に近い低い部分から、冷たくて重たい空気が、こぼれる様に流れ出します。
室内に水が入っていて、扉を開けたら水か流れ出て来るイメージが判りやすいと思います。
冷たい空気が流れ出すと、室内の圧力は低下しますから、今度は扉の上から、温かい空気が一気に室内に入ります。扉を開けたとたんに、一瞬で換気しますので、室内の温度は急上昇し、扉を閉じても、しばらく温度は元に戻りません。また、この時に、外気中の湿気が入り込みますから、空調機に着霜します。
高温運転も同様で、扉を開けると、熱くて軽くなった空気が、今度は扉の上から逃げ出して、設置場所の天井にそって広がります。一気に温度が上がるので、この付近に有る作動式の火災検知器が、扉を開く度に発報してしまう誤警報が発生します。
また、上から熱くて軽い空気が逃げるので、室内の圧力が低下して、床近くから外気が室内に侵入します。室内温度は急激に下降し、扉を閉じてもしばらくは元の温度には戻りません。
この現象は、マイナスの温度や、+50℃以上になると、顕著に表れます。この様に過酷な温度域でお部屋に出入りする場合は、絶対に前室は必要です。
過酷な条件の時にも、試験室に出入される必要がある御計画の場合は、必ず、前室の設置を検討して下さい。
エージング室の様に、運転中は扉を開かない場合は、過酷でも、前室は必要有りません。
前室の効果
前室を設けると、本室の扉を開いても、低温や高温の空気は、前室迄しか移動しません。
また、外気も入りませんので、ここでエアロックすれば、大量に換気される事は有りません。
この場合の空気の入れ替わりは、前室の体積分ですし、前室の温度は、本室の温度に近くなっていますから、乱れは少なく、前室の効果は、驚く程有ります。
最先端技術の潜水艦や、宇宙船にも同じ様な設備が有る事を考えると、方法は簡単ですが、前室の効果は確実に有ります。
扉からの瞬間換気
過酷な条件で運転中の試験室の扉を開いたら、この例の様に、一気に換気されてしまいます。
前室を設けない場合は、出入する扉を必要最小限に小さくして、素早く出入する事も有効になります。
人だけの出入りであれば、500×1600H程度の開口にして、素早く行えば良いと思います。
しかしこの扉では、機器の搬入が出来ませんので、これと別に大扉が必要になります。
親子扉にして、人が出入する方を狭くする事も出来ますし、大扉の中央に、子扉を付けた例も有ります。
扉のサイズは、お客様のご希望による注文生産ですから、ご希望のサイズで製作します。