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冷蔵庫は低温実験に使えるか?

実験で低温環境が必要になった時、真っ先に考えるのが冷蔵庫の利用です。

冷蔵庫は低温実験に使えるか?

冷蔵庫の空調方式

冷蔵庫は、肉屋さん、八百屋さんで使われますから、需要が多く、何坪型として、比較的安い価格で販売されております。運転温度は、+4℃以上で、制御方式はON-OFFです。
実験で、低温環境が必要になった時、真っ先に考えるのが、冷蔵庫の利用です。実際に、市販の冷蔵庫を、低温試験室として使用されているお客様は多く見られます。

一番簡単な例は、断熱された小部屋の天井に、写真の様なユニットを乗せただけの物です。上が冷凍機で、下が冷却コイルと送風機です。
これだけで、低温試験室もどきが出来てしまいます。

この様な簡易型の低温試験室の場合、実験者は、下記の問題でお困りになっています。

・換気が無い。

冷蔵庫に連続で入室していたら、冷えてしまいますので、長い時間入室している事はあまり無いので、換気装置は無視されている例がほとんどです。但し、少し高い温度で運転して、連続入室するなら、絶対に換気は必要です。
もし、小さな換気扇を取付するとしたら、給気孔が必要になります。給気孔無しで排気しても、冷蔵庫は密閉されていますから、室内が陰圧になるだけで、換気はしません。扉が開きにくくなるだけです。
壁に給気孔を空けると、換気は出来ますが、ここから直接外気が入りますから、この周囲の温度は上昇して温度分布が悪くなり、外気の当たる場所は結露して濡れて来ます。
また、夏季に外気を入れると、激しく冷却コイルに着霜して、温度が下らなくなります。

・室内の湿度が上昇する。

室内の天井に有る冷却ユニットからは、凝縮したドレン水がポタポタ流れ出て来ますから、室内は低湿度になっていると、皆様が思われています。
空気は、冷却するだけでは、室内の相対湿度は上昇するのです。ドレン水がポタポタ落ちているから、絶対に除湿されている筈だと、皆様がお考えになります。ここで低下するのは、絶対湿度で有り、温度だけ下げると、相対湿度は逆に上昇してしまうのです。
これは、低温試験室として冷蔵庫を選定されるお客様が気の付かない大きな問題です。
また、冷蔵庫の温度制御は二位置制御と呼ばれ、冷凍機のON-OFFで行います。冷凍機が停止すると、霜が溶けた冷却コイルの濡れた部分から、水分が蒸発するので、冷凍機の停止中は、温度と湿度がさらに上昇してしまいます。
室内が多湿になると、室内の床に置いていた段ボールが吸湿して変形して膨らみ、積み重ねると潰れます。移動しようとして、持ち上げると、底が抜けてしまいます。
また、室内に有る紙は吸湿してフニャフニャになり、鉛筆では文字が書けなくなります。
これらは、冷蔵庫を導入されてから気が付かれる、一番大きな問題です。

・温度分布が悪い。

冷蔵庫は天井の冷却ユニット(ファンコイル)の背中から空気を吸い込み、前から吹出しています。冷えた空気は重くなりますから、床付近に自然下降して、低温の空気だけが床の付近に停滞します。つまり、冷気はどんどん床に溜まり、天井付近と床では、大きな温度差が出来てしまうのです。特に冷え込む床付近の湿度が極端に高くなってしまいます。

・霜取が必要

冷蔵庫の運転を続けますと、ファンコイルに霜が蓄積して行きます。雪ダルマになると、空気が流れなくなり、冷えなくなります。試験室の出入りが多い程、外気が入りますから、着霜も激しくなります。冷蔵庫は、定時的に冷凍機だけを止めて、霜取を行う必要が有ります。(オフサイクルデフロストと言います。)

デフロスト中は、冷却が止まりますから、室内の温度はだんだん上昇して、霜が溶けると、この水が、冷却コイルから蒸発するので、室内の湿度は大幅に上昇してしまいます。

冷蔵庫は、低温実験室として使えません。

冷凍庫の場合

冷凍庫には写真の様なファンコイルユニットが、天井から吊り下げられています。
一般的に風が強くて騒音も大きく、室内は嵐の状態になります。
これも低温実験室としては、とても使用出来ない環境です。

冷凍庫は、冷凍食品等の保存用で、製品の出し入れ以外に、人が入って実験する事は想定しておりませんので、無理の無い事です。

冷凍庫は、定時的に送風機と冷凍機を止め、ファンコイルに蓄積した霜を電気ヒーターでデフロストさせています。
デフロスト中に、室内の温度は急上昇して、湿度は100%近くになりますが、冷凍食品は包装されておりますし、霜取り中も凍結したままなので、ほとんど影響は有りません。

この冷凍庫の中に、実験の為に裸で入れた被試験物は、この影響を直接受けます。これは自然界で起きる低温状態とは全く異なります。

自然界の低温状態は相対湿度も低くなるのです。冷凍庫は低温試験室として使えません。

低温実験室とは

低温実験室は、冷蔵庫と異なり、人が入室して実験する事を想定して、換気しております。
風と騒音は出来るだけ少なくして、温度分布も高くなるように工夫しております。
また、一般の環境試験室では、低温実験中に霜取りに入ってしまうので、この時に温湿度は大幅に乱れてしまい、これでは本当の低温実験は出来ません。

弊社の低温室は、低温運転中に室内の温湿度を乱さずに霜取りを行う連続運転仕様です。霜取中でも、室内の温湿度が乱れる事は有りません。

弊社の環境試験室は、低温低湿度の運転でも、霜取り休止無しで、安定した連続試験が可能です。

弊社の制御は、基本的に連続で必要冷却量より少し多めに冷却しながら、少し加熱して、設定温度を得ております。冷凍機は必要な冷却除湿量に能力制御されて連続運転します。

冷却してから加熱すると、相対湿度が下りますから、室内は冷蔵庫の様に、多湿状態にはなりません。
弊社の空調機は、加熱量を調節すると、比例して冷却量が変わり、室内の相対湿度が可変できます。

この制御は、とても省エネに湿度の制御ができます。
弊社の空調機は、制御盤内に能力制御のボリウムがあり、加熱量を制御すれば、安定した低湿度を得る事が可能です。

また、弊社の低温試験室には、お客様のご希望により湿度調節計で除湿量と加湿量を自動制御して、設定された温湿度で安定した連続運転を可能にした機種もあります。

弊社の空調機は、お客様が希望される温湿度条件に合わせて、最適な運転を行う様に設計された空調機で、この制御方法は、機種毎に様々な工夫がされています。

写真は、-20℃迄の低温実験が可能な環境試験室です。

室内の天井には、室内ダクト以外は、冷凍庫の様に、出っ張るユニットは何も有りません。
試験室内はとても明るく、広くお使いになれます。

写真は低温試験室の空調機内部です。
一般の空調機と比べると、様々な工夫がされており、複雑ですが、霜取休止しないので、低温でも安定した温湿度が得られる空調機です。

 
 
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