恒温恒湿室や、環境試験室を購入する場合は、消費電力が少なく、精度が高く、故障が少なく、出来るだけ長く使用したいと考えるのは当然です。
実際に各社から見積を取ると、価格は様々ですが、概ね、価格の安い装置は、消費電力が大きく、故障も多発する傾向が有ります。
特に、パッケージエアコンを利用して、これに加湿器を組み合わせた物は、簡単で、価格も安くできますから、業者も多く、納入例も多いのですが、実は、消費電力が大きく、加湿器の故障が多発します。この方式で、20年以上運転されている例は、ほとんどありません。
機器を選定する時に、価格の安い装置を選定されるのは、世の中の常ですが、数年経過した頃に、他社の省エネな装置に気が付かれ、自社に有る装置と比較すると、電気料金が何倍と、かなりの高額になっており、故障も多い事が判明すると、大変驚かれる例が有ります。
保守、修理等、年間経費を比較すると、あまりにも大きな差があるので、愕然とされます。
ここで、購入価格だけで選定したのは、大きな間違いであったと気が付かれます。
この様な他社製品の入替え、改造等を請け負う事は良く有りますが、消費電力が1/3以下になる例が多く、1/6になった例も有ります。故障も激減しますから、今迄の高額な電気料金と、多発していた故障は、いったい何だったんだと、入替えしたお客様は大変驚かれます。
他社の空調機を省エネに改造した例は、ホームページの省エネに改造した実資料で公開しております。故障も極端に少なくなり、大変喜ばれております。こちらもご参照下さい。
購入された空調装置の電気料金は、改造しなければ削減できませんが、故障率を下げる工夫は、幾つかあります。
エアコンを利用した試験室で、最大のトラブルメーカーは、何と言っても加湿器です。水を沸騰させて加湿しますが、水道水中のミネラル分(カルシウム、マグネシウム、シリカ等)は蒸発出来ません。長く使用すれば、加湿器の内部に蓄積して、やがて固形化し、ヒーターの熱交換を阻害するので、温度ヒューズ切れ、ヒーターの焼損等の故障が発生します。
この固形物は、特に高温になるヒーターの周りにガチガチに付着します。
業界では、これをスケールと呼んでおります。
加湿を中断して、排水して加湿水を置換する等、メーカーにより、色々な対策方法は有りますが、いずれの方法も、少し長持ちする程度です。決定的な解決方法は有りません。
加湿器の故障多発に悩まれて、メーカーに相談すると、純水器の取付を薦められます。
純水器を取付けしても、スケールが加湿器の中に溜まるか、純水器の中に溜まるかの違いで、純水器を取付けすれば、加湿器の故障は減少しますが、今度は、純水器の保守に高額な費用がかかります。これでは、保守する費用は変わらず、解決方法とは言えません。
加湿器の保守
メーカーに加湿器のオーバーホールを依頼すると、非常に高額な請求書が来て驚かれます。電熱式の加湿器が使用されている例が多く有りますが、この構造は簡単です。加湿タンクの中にヒーターが有り、お湯を沸かしているだけです。水を蒸発させると、蒸発が出来ないミネラル分は、必ず加湿タンクの中に残り、特に温度の高いヒーター周りには、スケールと呼ばれる固形物が、ガチガチに付着して蓄積します。すると加湿ヒーターと水が熱交換できなくなり、温度ヒューズ切れ、ヒーターの焼損等の故障が起きます。
オーバーホールと言っても、実際には、このスケールを削り取るのが主体の作業です。業者に依頼すれば、当然出張料と技術料を請求されます。しかし、これだけではメーカーは利益が出ませんので、あれが駄目、これも駄目と部品を勝手に交換されてしまいます。請求書は何十万円にもなり、これでは新品の加湿器と交換できたと思われる金額に驚かされます。
メーカーの機種によっては、加湿器の解体はかなり面倒で、技術も必要です。パッキングを痛めると、交換部品も必要ですから、この様な機種では、素人は、簡単に手が出せません。
この様な加湿器には、トラブルを減らす目的で、定時的に排水して置換する機能が有ります。
この排水回数を増やす事で、長持ちをさせる事が出来ますが、置換した水が再沸騰する迄は、加湿が停止しますから、水の置換の度に、湿度は大きく低下して、湿度の安定性は大きく損なわれる事になります。
また、湿度調節計の設定を、許容できる範囲で、少し下げると、加湿量が減少しますから、その分だけ加湿器は長持ちします。湿度の移行は早いので、精密な測定をしない時は、湿度調節計の設定を下げて置き、必要な時だけ設定を戻す使用方法や、湿度の影響が無ければ、夜間だけ湿度の設定を下げて置く事も、加湿器を長持ちさせる方法です。
加湿器は、運転する湿度が高い程、運転時間が長くなる程、スケールの蓄積量が増えます。
パン型と呼ばれる上部が解放あるいは、解放出来る加湿器が使用されている例も有ります。この型式の加湿器であれば、上から簡単に付着したスケールを取り除く事が出来ます。
スケールが完全に固形化する前に、スケールを取り除けば、かなり長い期間使用する事が出来ます。加湿器を取り外さなくても、スケールがまだ軟らかい内なら、ヘラの様な物で、端の方に掻き集めて取り除けば、これだけでも、かなり長い期間使用する事が出来ます。
お客様で対応ができるのは、この程度ですが、定期的にスケールを取り除くだけで、加湿器故障の防止には、かなりの効果が有ります。
弊社の装置は、この様な経験から、余裕の有る加湿器を2台使用して、これを交互に洗浄させております。洗浄中も残された加湿器だけで湿度を安定に保持できます。万一の故障時には、残された加湿器だけで運転できますから、修理する迄、そのまま実験が継続できます。
これは、加湿器のトラブルを回避する有効な方法で、ホームページのCSC方式で説明しております。ご興味の有る方はご参照下さい。
冷凍機の保守
空調機には、必ず室外機と呼ばれる冷凍機があり、屋外に設置されております。冷凍機は元々屋外用ですから、雨にも強く、屋上等に設置した場合は、ほとんど故障しません。
建物の1階の活け込みや、花壇の中に冷凍機を設置している例も多く有りますが、この様な設置場所では、冷凍機の裏側に有るラジエターの様な放熱器(コンデンサ)に、草や蔓がからんだり、虫の死骸、鳥の羽根、蜘蛛の巣等で目詰まりが発生します。
冬季は調子が良かったが、初夏になったら急に異常停止した等の場合は、ほとんどがこのコンデンサの目詰まりが原因です。
冷凍機のコンデンサが見詰まりして放熱が出来なくなると、冷媒の圧力が上昇して、高圧カットと言う安全対策が働き、異常停止してしまいます。
夏に冷凍機が突然異常停止する原因の大半は、この高圧カットです。この故障は、冬季にはあまり発生しません。この様な故障の時は、修理業者を呼ぶ前に下記を試してみてください。
冷凍機の放熱器は、ホースを使用して水洗する事が出来ます。もともと、屋外用で、嵐の中でも運転していますから、ホースで水をかけた程度では、故障原因にはなりません。
この目詰まりを何らかの方法で取り除けば再運転できますが、異常停止の状態は、冷凍機の中で自己保持されていますから、電源ブレーカを一度遮断しないと、再運転は出来ません。
洗浄が終わりましたら、ブレーカをいったん切って、再投入すれば、ほとんどの場合は簡単に復帰します。夏季に発生する冷凍機の故障の大半は、これが原因です。
冷凍機の設置場所に草が有る様な場合は、季節の変わり目に、草を刈り、コンデンサの付着物を取り除き、水洗しておくと、長期間このトラブルは防止できます。
吸込口フィルタの保守
空調機の吸込口には、エアフィルタが取付けされております。このフィルタが目詰まりして、調子が悪くなっている例が有ります。
社内で試験室のご担当が変わると、フィルタは定期清掃が必要だとの引継ぎがされてない場合があり、何年間も清掃されず、完全に目詰まりして、不調になっている例が有ります。
エアフィルタが目詰まりすると、空調機内の空気の流れが低下しますから、温湿度が不安定になったり、空調機内部の冷却コイルが着霜、凍結する等の故障を起こします。
エアフィルタは、ホルダーから抜いて、表側から電気掃除機で吸い取れば、比較的簡単にきれいに清掃できます。ホースを使用して、裏側から水洗する事も可能です。
試験室の保守
恒温恒湿室や、低温運転、あるいは高温多湿運転を行っていた環境試験室では、停止すると、一般的に室内は多湿の状態になります。
条件によっては、室内に結露が発生して、これを放置するとカビ臭くなる原因になります。
空調機内の冷却コイルには、水滴が残りますから、これも放置するとカビの原因になります。
連続運転の場合は問題有りませんが、過酷な条件で運転していた場合は、停止後に扉を閉めておくと、室内がいつまでも乾燥しないので、カビ臭くなったり、鉄材が有ると錆の原因になります。
この様な場合は、運転を停止した後に、扉を解放して、冷凍機と加湿器を停止させ、しばらく送風機だけ運転しておくと、乾燥させる事が出来ますので、この様な問題は起きません。
空調装置と、試験室を乾燥させておけば、非常に長持ちします。特にお部屋は、40年以上ご使用されている例も有ります。
恒温恒湿室用の空調機の中に、露点飽和散水システムと呼ばれる方式が有ります。この方式の最大の欠点は、空調機内部の充填剤にカビが生えて、室内がカビ臭くなる事です。
この方式のカビ臭さは、充填剤を交換しないと消えませんが、交換しても、再びカビが発生する事には変わりませんので、一時しのぎと言えます。
この方式は、定期的な充填剤の交換が必要で、交換には、定期的に高額の費用がかかります。
弊社には、この方式を改良したDPC方式が有り、この方式は充填剤にカビが生えません。
10年以上無故障で稼働している実績が多く、省エネで、非常に精度の高い空調機です。
御興味の有る方は、ホームページ各種技術資料の、DPC方式か、露点散水方式の項目をご参照下さい。