用語集(運転温湿度範囲の決定)
専門用語をわかりやすく解説します。
運転温湿度範囲の決定
恒温恒湿室の温湿度範囲
恒温恒湿室の温湿度範囲は、旧JIS の 20℃/65% から、新JIS の 23℃/50%を中心に業界により様々な要求が有りますが、概ね20℃~25℃で、50~70%程度です。
この範囲であれば、標準の恒温恒湿室で対応が可能で、この空調方式には、弊社独自のDPC方式と、CSC方式が御座います。詳細は、運転条件による空調方式の選定の項目をご参照下さい。
恒温恒湿室は、一般的には、常温常湿と言われる温湿度で運転する装置で、この条件を大きく外れる物は、環境試験室とか、人工気象室と言う名で呼ばれております。
常温常湿より、少し高温で多湿の条件を希望される場合、例えば30℃/80%を希望される場合は、ヒーターと加湿器を大きくすれば、条件は簡単に得られます。
但し、結露と言う問題が出てきて、断熱の悪い所には、直ぐに結露が発生します。
まず、床の断熱は必須で、断熱をしないと、床はプールになります。扉の周りにも結露して、窓は曇りますから、それぞれ、ヒーターで加熱してやれば、結露と曇りは防止でき、恒温恒湿室用の装置でも、多湿運転は可能になります。お部屋の方に少し費用がかかるだけです。
但し、低温低湿度の場合は、冷却コイルの着霜が問題になります。例えば、どんなエアコンにも、18℃以下の設定目盛りは有りません。これは、これ以下では冷却コイルが凍結してしまうからです。
恒温恒湿室も同じで、20℃以下で湿度制御しようとすると、冷却コイルの着霜が発生します。求められる低湿条件により、いろいろな方法で、運転を休止させずに霜取をする必要が出て来ます。運転を休止する方法では、低温低湿度の実験は出来ません。
この低湿度の条件でも、霜取する方法が変わり、価格差が出て来ます。
これらの空調機の詳細は、運転条件による空調方式の選定の項目をご参照下さい。
環境試験室の温湿度範囲
環境試験室で、良くご希望のある条件は、-30℃~+60℃/20%~95%と言う物です。
試験槽では、この様な仕様も見かけますが、人の入る試験室では、とても考えられない仕様なのです。何の実験に使用するのかと聞くと、どうせ導入するのなら、幅の広い方が良いだろう程度で、費用面は何も考えられておりません。
人間は、何℃の部屋まで入室出来るのか?
人間は、-40℃でも、+150℃でも、靴を履いて、手袋をしていれば、半袖でも数分間は入っていられます。-40℃では、素手ではハンドルに手が凍り付いてしまいますし、+50℃以上では、壁に触るだけで火傷してしまいます。靴と手袋だけは絶対に必要です。
人間は、40℃/85%のお部屋には、入室出来ません。こう言うと、そんな馬鹿な、私は80℃のサウナに入った事が有るから、40℃なんて全く問題無いと言われます。
40℃/85%の室内の露点温度は、37℃です。ここに36.5℃の体温の人間が入室すると、全身に結露が発生して、身体中びしょびしょになります。夏季に冷蔵庫から出したビール瓶と同じです。
ここで呼吸すると、鼻の中でも、結露して空気を吸うごとに、ゴホゴボと音がします。当然肺の中にも結露が発生して、肺の中に水か溜りますから、肺炎になってしまうのです。
人間の入る試験室であれば、これ以上の温湿度にしたら、入室は出来ません。
環境試験室の仕様の決め方
環境試験室は、その温湿度の範囲によって価格が決まります。1番費用がかかるのは、マイナスの温度域で、連続運転を要求される場合です。これはかなり高額になります。
+5℃以上の条件であれば、低温でも比較的安く作れ、高温多湿の条件が有っても、お部屋の断熱性を高める程度ですから、マイナス温度の試験室より、はるかに費用は掛かりません。
マイナス温度も、その温度域で断熱パネルの厚みも変わり、当然低い程厚くなり、冷凍機も大きくなりますので、高額になります。
また、マイナスの温度では、必ず霜取が必要になります。一般的には、運転を休止させて、霜取を行いますから、この間は、室内の温湿度は急上昇して結露が発生します。
これでは、はっきり申し上げて、低温低湿の実験にはなりません。
低温でも霜取休止が無く、そのまま高温多湿運転迄、連続で可変したい等と欲張ると、装置はかなり複雑になり、費用は数千万円になってしまいます。
また、条件をあまり欲張ると、いろいろ制約が出てきますから、非常に使いづらい装置にもなります。
費用を少なくするには、温湿度範囲は、できるだけ必要最小限に絞った方が得策になります。
どうせなら、広くしたいと言う気持ちは判りますが、必要の無い条件を除く事で、費用はかなりお安くなります。
特に、0℃以下の低温運転では、マイナス温度域での霜取りになりますから、ここだけで、かなりの費用がかかります。また、+5℃以下では、空調機の内部は、0℃以下になりますから、かかる費用は、マイナス温度の試験室とあまり変わらなくなります。
また、霜取は、冷蔵庫の様な定時霜取方式でも良いか、連続運転を希望するかでも、大幅に費用が変わります。
1番価格に影響しますのは、+5℃以下の運転が必要かどうかと、低温低湿度の運転を希望するかどうかの点で、必要が無ければ、これらの運転条件を除く事で、設置費用には大幅な差が出ます。