
用語集(運転温湿度範囲の決定)
専門用語をわかりやすく解説します。
運転温湿度範囲の決定
恒温恒湿室の温湿度範囲
恒温恒湿室は、旧JISで規定されていた 20℃/65%と、新JIS Z8013 で規定された23℃/50%の標準試験室の規定があり、現在は、この2種の仕様が多く出ております。
繊維業界等では、日本の標準的な気候に合わせて、20℃/65%が現在も採用されています。
また、業種によって若干の差が有りますが、概ね、20~25℃/50~70%RHの範囲内で、独自に温湿度の仕様を定めて、製品評価の試験室として運転している例も有ります。
弊社には、独自で開発した加湿器を使用しない、高精度で故障の少ないDPC方式の空調機が有ります。このDPC方式で運転可能な範囲が、丁度この標準試験室の温湿度の範囲です。
JIS Z8013では、5~35℃を常温とするとの規定が有りますが、弊社では、別の考え方で、DPC方式で運転できる JISの標準試験室の温湿度範囲を、常温常湿と考えております。
恒温恒湿室を設置する場合は、設置場所と広さ、熱負荷等で、大まかなご予算が決まります。
DPC方式は、冷水で冷却除湿する方式なので、20℃/45%以下では、水槽凍結を起こしますから対応が出来ません。但し、高温多湿は、その条件によっては利用が可能です。
弊社では、この標準試験室の温湿度範囲を恒温恒湿室と呼んでおり、この規定の範囲を超える温湿度は環境試験室と呼んでおります。業界により、人工気象室と呼ぶ場合も有ります。こちらの温湿度範囲には、独自で開発した、故障の少ないCSC方式で対応しております。
恒温恒湿室でも、少し広い温湿度条件を希望される場合は、加湿器を使用するCSC方式になります。CSC方式を選択されても、標準試験室として、23℃/50%の、温湿度条件で安定した運転を行う事は、問題無く可能です。
ここで言う、DPC方式、CSC方式は、弊社独自の制御ですから、他社に問い合わせしても、これが何の事か判りません。ホームページの恒温恒湿室の項目の中でご確認下さい。
CSC方式を選定されると、運転可能な温湿度範囲が少し広くなります。高温多湿の実験を行いたい場合で、例えば30℃/80%の運転を希望される場合では、ヒーターと加湿器を少し大きくすれば、この条件は簡単に得られる様になります。
但し、冬季は、断熱の悪い所には、結露が発生する問題が出て来ます。床断熱しなければ床に結露してプールになりますし、扉枠に結露して水滴が落ち、窓は曇ります。
但し、これらは、断熱して、ヒーターで少し加熱してやれば、簡単に防止ができます。
CSC方式の恒温恒湿室用の空調機は、そのままでも高温多湿の運転は可能ですが、お部屋は結露しますから、床等の断熱が必要になり、お部屋の方に少し費用がかかる様になります。
低温の運転条件では、冷却コイルの着霜が問題になります。例えば、どの様なエアコンにも、18℃以下の設定目盛りは有りません。これ以下に設定すると、エアコンに着霜して、連続で運転すると、凍結してしまうからです。
恒温恒湿室も同じで、18℃以下の運転では、着霜する可能性が有ります。20℃の運転でも、湿度を40%以下に下げると、冷却コイルに着霜して、長時間の運転では凍結します。
短時間の運転は可能ですが、連続運転すると、冷却コイルが凍結しますので、運転を休止して、霜取りを行う必要が有ります。運転を休止すると、室内は直ぐに多湿になりますから、運転を休止して霜取りする恒温恒湿室では、長時間の低温低湿度の実験は出来ません。
実際に、低温低湿度で連続実験を行うには、運転中に湿度を乱さずに霜取をする必要が有ります。連続して、低温低湿が得られる様な装置になると、その対策が必要になりますから、弊社では、この様な装置を環境試験室と呼んでおり、着霜しない条件の恒温恒湿室とは区別しております。
環境試験室の温湿度範囲
環境試験室は、実験する目的により様々な要望が有ります。メールで問い合わせが良く有る例では、仕様をかなり欲張り、-30~60℃/10~95%RHと言う物が有ります。
小さな容積の試験槽なら、この様な仕様を見ますが、人の入る試験室では、一般的なご予算では、とても作れない仕様なのです。
何の実験に使用するのかお聞きしますと、どうせ設置するなら、何でもできた方が良いとの回答で、実際の実験に必要な温湿度範囲を大幅に越える要望が出されます。
費用の面は、何も考えられておりません。とりあえず予算を知りたいと言うだけです。
環境試験室は、広さと、熱負荷、温湿度条件等の仕様を必要以上に欲張ると、大幅にご予算が変わります。この様な仕様では、見積が非常に高額になります。実際に、この様な要求をされるお客様の見積は面倒なだけで、納入が決定した事が有りません。
温湿度範囲の広い環境試験室は、はっきり申し上げて、高額です。試験室の計画では、運転可能な温湿度と、広さは、必要最小で考えないと、実現が不可能になります。
人間は、何℃の部屋まで入室できるのか ?
温度だけが高く、湿度は低い、150℃の乾燥室や、超低温の−40℃の部屋に入室した経験が有りますが、靴を履き、手袋をしていれば、短時間なら人間は薄着でも入室が可能です。
但し素手で壁やドアノブに触れると、高温では火傷しますし、低温では触った部分に指が瞬時に凍り付きます。
人間は、50℃以上の品物は、熱くて持っていられませんが、150℃の空気の部屋なら、低湿度であれば、短時間なら耐えられるのです。
この様な温度を実際に経験すると、人間の身体の対応力の高さには驚かされます。
打ち合わせの中で、40℃/85%RHのお部屋に入室して、作業をしたい等のお話も出ます。
お客様は、かなり高温のサウナに入室した事が有るから、この程度の温湿度程度なら絶対に大丈夫だと言われますが、これはサウナの湿度が低いからです。
この条件の露点温度は、37℃ですから、このお部屋に36.5℃の体温の人間が入室すると、肺の中で結露して、肺炎を起こします。入室すると、髪の毛から水滴がしたたり落ち、鼻の中で、空気が水滴に替わり、空気を吸うと、ゴボゴボと音がする様な条件になります。
環境試験室は、内部に人が入れる条件が多く、過酷な条件では、人が入室出来ません。
過酷な条件で、大きな実験スペースが必要無い場合は、他社の試験槽をご検討下さい。
環境試験室の温湿度による価格差
環境試験室は、常温常湿の恒温恒湿室と比較すると、どうしても価格は高くなります。
特に、温湿度の運転範囲が広い場合や、お部屋の広さが変わると、大きな金額差が出ます。
低温での湿度制御や、マイナスの温度の運転を希望されると、その温度により、断熱パネルが厚くなり、運転温湿度が低い場合や、お部屋が広ければ、冷凍機が大きくなるのです。
できるだけ運転が可能な温湿度範囲を広くして、お部屋を広くしたいお気持ちはわかりますが、温湿度範囲やお部屋を広くするほど、価格は高くなります。
あまり必要は無いと思われる温湿度域迄は欲張らず、実験に必要な広さと、必要な温湿度域だけに条件を絞れば、価格を下げる事が出来ます。
必要な条件に絞った見積が、想定より安ければ、その先を考えれば良い事で、あまり最初から欲張ると、お客様が考えている夢は、実現が不可能な金額のお見積になります。
また、一つの策として、低温専用のお部屋と、高温多湿専用のお部屋の2室に分けて考えると、1台当たりの価格は下がりますから、低温あるいは高温の専用機とするのも一策です。
超低温と、高温では、グリスも違いますから、極端に広い幅温湿度は、実は無理が有ります。
運転範囲を広くすると、常温付近の運転でも、冷凍機やヒーター、加湿器が大きくなるので、消費電力が大きくなり、故障も多くなります。この修理費も高額になります。
「何にでも使える物は、実は何にも使えない」のたとえが有りますが、温湿度範囲を広くした試験室は、実は、良く使用する常温域で着霜したり、使いづらい試験室になります。
また、低温低湿度では、絶対に霜取が必要ですが、実験中に、運転を休止して霜取りを行ったら、直ぐに室内は多湿になります。この様な装置では、霜取中にサンプルが吸湿するので、本当の意味での低湿度の実験は出来ません。仕様書には、霜取の方法は書かれていますが、霜取中に室内が多湿になる等、親切な事は書かれていません。
これを見落とされて、実際に試験室が納入されてから、低温低湿では連続して実験ができない事に気が付かれる事が多いのです。これでは手遅れですから、特に注意が必要です。
低温低湿度の運転では、省エネで、霜取休止しない弊社のDCS(デュアルコイル)方式が喜ばれております。DCS方式の詳細は、ホームページの環境試験室の項目でご確認下さい。
マイナスの温度域で長期間連続運転する仕様は、2台の空調機を交互に運転する必要があり、価格が非常に高くなります。このマイナス温度の条件を行う時は、入室者はいないので、換気する必要は無く、冷凍庫の様に、運転をいったん休止して霜を取る、冷凍庫と同じ、定時霜取方式にするのが一般的です。これならば費用もあまり掛かりません。
また、弊社の装置は、マイナス温度域の湿度制御には、対応しておりません。
これらの事情から、実際に納入実績の多いのは、温度+5~60℃/湿度20~85%RHです。
湿度の保証範囲は、15℃~40℃の温度範囲内と言った仕様で、広さも2~3坪程度が多くなっています。この温湿度範囲以外も製作可能ですが、この範囲を超えると、急に価格が高くなりますので、ほとんどのご要望が、御予算と相談された結果、この辺で落ち着きます。
幅広い温湿度で運転可能な環境試験室を希望される場合でも、最初は、無理の無い、この程度の温湿度範囲で、希望する実験ができないかを検討されて下さい。
環境試験室で、高温多湿の運転を行えば、窓は曇り、扉や排気ダクトには、結露して、水滴が落ちる等の問題が発生します。
高温多湿の条件が有ると、これらの結露を防止する為に、完全な断熱対策が必要になります。高温多湿室の専用室は、空調機は安く出来ますが、お部屋の価格が少し高くなります。
高温多湿で連続運転する加速度試験 (製品を高温多湿の条件で6ヶ月保管して、劣化を調べる) 等では、湿度センサが吸湿して感度が下がり、湿度の表示が、実際の湿度より低く表示される問題が発生します。すると湿度調節計の表示は90%なのに、実際の室内は100%の湿度になり、床に水が溜まってプールになるトラブルが発生します。プールが出来てしまってから、初めて室内が100%になっている事に気が付かれます。
実際の室内湿度より、調節計の湿度表示の方が高くなるトラブルは、あまり発生しません。
この様に、高温多湿で連続運転する場合は、吸湿防止対策をされた湿度センサが必要です。具体的には、湿度センサを精密に加熱して湿度を測定し、演算して元の値に戻すものです。
湿度センサ部の温度が露点温度より少し高ければ、湿度センサ本体には吸湿しません。
このタイプのセンサは、現在輸入品しか無く、センサの価格が非常に高額になります。
但し、温湿度を可変する試験室では、多湿運転が長期間続く事はあまり無く、吸湿しても、他の条件の運転時にセンサが乾いてしまう様で、この様なトラブルは発生しておりません。
高温多湿で長期間連続運転した場合でのみ、この様なトラブルが発生しております。この様な現場では、センサを輸入品に交換する事で、このトラブルは完全に解決しております。
加速度試験では、高温多湿で6ヶ月の連続運転をする事が、必須の条件ですから、途中で故障したら、実験のやり直しになってしまうので、試験室の故障は絶対に許されません。
これらの高温多湿の連損運転を行う試験室で、一番問題になるのは、加湿器の故障です。
環境試験室の故障の90%以上が加湿器のトラブルです。
この様な高温多湿で連続運転する試験室では、湿度センサのドリフトと、加湿器のトラブルか少ない方式を採用する事が、極めて重要になります。
弊社の加湿器故障対策
弊社のCSC方式は、空調機の内部に2台の加湿器が有ります。運転中に湿度を全く乱さずに交互に洗浄しておりますから、湿度が安定しているだけでなく、実験中に加湿器が1台故障しても、残る1台で修理する迄の間、湿度条件が保持できる様に工夫されております。
また、弊社のCSC方式は、必要なだけしか除湿しないので、外気温湿度より低い設定条件では、除湿制御をするだけで、極めて安定した湿度条件が得られます。加湿器を停止して運転すれば、加湿器の損傷も無くなり、この運転方法は、究極の省エネ運転になります。
また、加湿器の稼働率が低い制御なので、加湿器がとても長持ちする様になります。
弊社の加湿器の新品交換は非常に簡単です。お客様ご自身で交換された例も多く有ります。
故障した加湿器は、修理すれば再利用できますから、これを予備として保管しておくと、これ以降は、万一加湿器2台が同時に故障しても、とりあえず1台だけ交換すれば、条件が得られ、そのまま実験は継続可能です。湿度が低下する時間は、加湿器を交換する時間だけですから、多湿の連続運転条件でも、加湿器の故障で悩まれる事は、ほぼ無くなります。
加湿器は交互自動洗浄により、故障はかなり少なくなりましたが、水質の影響も有りますから、加湿器の故障は、皆無になってはおりません。
この為、弊社では加湿器の在庫は常に持っており、故障時には、即日発送する事が出来ます。遠方のお客様でも、故障連絡を受けた日の夕方に宅急便で発送したら、翌日には加湿器が届き、直ぐに交換出来たので、もう新しい加湿器で運転していますと連絡がありました。
他社の試験室も所有しているが、そちらは、加湿器の故障が多く、故障が発生したら、修理は数週間待たされて、その修理費も、部品代の他に、出張費、交通費、宿泊費等が加算されで、数十万円もかかったそうです。
弊社方式の加湿器の故障の少なさ、対応の速さと、加湿器の価格の安さ、加湿器交換に経費が掛からない事には、大変驚かれておりました。
弊社でも、過去に加湿器の故障の多発ではいろいろ苦労しましたので、改良を続けており、これが現在、弊社で実施している、最良と思われる加湿器トラブルの対策方法になります。
低温多湿と高温低湿運転の制御
一般的な環境試験室の仕様書では、低温低湿の下限と、高温多湿の上限の2点だけの温湿度が表示されており、この間の条件は、全て問題無く運転が出来る様に見えます。
実は、一般的な空調方式では、低温多湿での連続運転や、高温で低湿度の運転は出来ません。
低温多湿は、低い温度の冷却コイルに、加湿器の蒸気が当たるので、激しく着霜して、短時間で冷却コイルの凍結を起こします。
高温の運転では、冷却コイルの温度が高くなり、冷房能力だけが大きくなり、除湿しません。高温低湿度に設定しても、消費電力が大きくなるだけで、低湿度の条件は出ません。
一般的な仕様書では、温湿度の下限と上限だけが表記されており、この間の温湿度は全て保証されていると思われがちですが、温度の下限で湿度の上限、あるいは温度の上限で、湿度の下限は、まず出ないと考えて下さい。
この条件で実験される予定が有る場合は、その希望条件を指示して注文しないと、一般的な空調方式では、低温多湿や、高温低湿の実験は出来ません。この温湿度は、お客様があまり希望されないので、無視されています。納入されてから低温多湿や、高温低湿が出来ない事に気が付いても、手遅れになります。この条件が必要な場合は、特に注意が必要です。
弊社の環境試験室の空調機は、この一般的な空調機では出せない低温多湿や、高温低湿の条件でも、楽々クリアしております。
但し、これは企業秘密になりますので、ここでは機器の詳細な内容は公開しておりません。
環境試験室は、高額な商品ですから、購入してから、実験に必要な条件が出なかったら、担当者の責任問題になります。
仕様書だけでは見えない部分は沢山ありますから、仕様書と価格だけで選定されない様に、くれぐれもご注意下さい。
弊社のホームページの技術資料では、過去に経験した事例等から、各種の資料を公開しております。試験室をご計画の場合は、技術資料の項目を、ぜひ参考にされて下さい。
また、他社と、この様に大きな性能差が有りますと、これは詐欺なのではないかと、心配される例があります。
特に消費電力の少なさでは、他社に相談すると、他社の30%の削減程度なら有るかも知れないが、1/3以下になる等は、絶対にあり得ない、アイテックスは詐欺師なのではないかと、注意されてしまう様です。
他社の装置を改造して、極端に省エネにした資料も、ホームページの省エネの項目で公開しておりますので、こちらもご参照下さい。それでも、この様な文章や写真では、捏造と判断されてしまい、信用して頂けません。
そこで、弊社では、独自のDPC方式と、デュアルコイルのCSC方式の試験室を、川口の工場で公開しております。何時でも見学が可能で、レンタルとしてもご利用いただけます。
性能面で疑問に思われる事が有りましたら、百聞は一見に如かずと申します。赤羽駅から、車でご案内しますので、ここで、低風速で低騒音、精度が高く、省エネで、メンテナンスが簡単な事等、実際の性能を確認されて、他社の装置と比較される事をお薦めします。
気象庁検定付きの温湿度計、電力計、騒音計、風速計等も、常備しております。