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用語集(吹出ダクトの方式)

専門用語をわかりやすく解説します。

吹出ダクトの方式

一般的な空調ダクト

一般空調では、お部屋の天井裏に金属のダクトが有ります。ダクトにはカーブが有るので、柔らかなグラスウールで保温されております。表面はアルミテープや、綿布等で仕上げされておりますが、この部分はお客様が見る事はほとんど有りません。

グラスウールは、ウレタンと比べると断熱性が悪く、空調が必要な容積は、お部屋プラス、ダクトの容積になり、断熱の悪いダクトの部分が増えますから、熱効率は悪くなります。
一般空調では、常温常湿ですから、この方式でも、ほとんど問題になる事は有りません。

左の写真は、環境試験室の室外ダクトの例ですが、この様に完全保温しないと、低温や高温多湿の運転では、空気漏れや、断熱が悪い部分が有ると、結露します。グラスウールの断熱では濡れてしまうので、さらに断熱性が下り、天井から漏水する原因にもなります。

恒温恒湿室でも、天井裏ダクト方式の場合は、加湿を天井裏のダクトで行うと、加湿器から発生した蒸気がダクト内で結露して、天井から漏水している現場は、良く目にします。
天井ダクト方式で完全保温とするには、費用的にも高額になってしまうのです。

コーナーダクト方式

弊社では、ほとんどの場合、下の写真の様な、室内コーナーダクト方式を採用しております。

この方式のメリットは、お部屋の容積が増えないので、空調の効率が良い点です。

断熱された部屋の中のダクトなので、特に断熱は必要が無く、費用も少なく、結露も発生しません。また、ダクト内に吸音材を貼ると、非常に静かになります。

コーナーダクト方式は、下の写真の様に、吹出口の位置と数、吹出す風速等が目的に合わせて選べます。吹出口のルーバーの調節により、風を嫌う場所には風を送らず、その周囲には風を多く流す事で、循環回数を確保して、温度分布を高められます。
この方法は、実験目的に合わせた理想的な送風が、簡単に調整して可能になります。

直吹き方式

小さなお部屋では、ダクトを設けず、空調機から直接吹出させている場合も有ります。

左の写真は、直吹きと呼ばれる方式です。1~1.5坪程度の小さなお部屋では、吹出口は1ヶ所だけの場合が多く、特にダクトは設けずに、1ヶ所から吹き出させている例も有ります。

この写真のガラリの裏側が、空調機になっております。この装置は低湿度を得る装置なので、少し空調機の幅が大きくなっています。通常の恒温室や、恒温恒湿室等の仕様であれば、この半分程度の幅の吹出口サイズになります。

吹出口にはルーバーが有りますから、風向きの調整が可能で、自動可変風速は、標準装備ですから、設定温度到達後は低風速低騒音になります。
更に低風速をご希望の場合は、お客様自身でも、風速の調整は簡単に行う事が出来ます。

高温室のダクト

空気は高温になると、膨張して体積が膨らみ、とても軽くなります。高温室では、天井の上に空調機本体が乗っている例や、空調機が天井から吊られている例が良く見られます。
軽い空気を天井から吹き出して、天井で回収する方式では、天井ばかりが温まります。
室内に棚等が有ると、風を強くしても、床付近に迄、温風は届きませんので、絶対に床付近は温まりません。この方式の高温室は、実に良く見かけるのですが、温度分布の悪さでは、皆様が悩まれております。

この方式の高温室では、お部屋の中央に温度センサを設置すると、この部分を中心に制御します。室内中央の温度計が50℃なので、全体が50℃になっている筈なのに、実は、下部の棚に置いた製品の歩留まりが悪いと言う問題は良く聞きます。
この様な恒温室では、風が少ないと、棚の中迄風が流れませんので、ひどい温度分布になります。天井と床の温度を実際に測定すると、天井は60℃も有り、床は30℃しかなかったと言う驚くような測定結果も出ております。

床下から全体に温風を吹出させるのは理想ですが、費用がかかりますから、実際には、左の写真の様に、床のコーナーから床に向かって温風を吹き出しているのがほとんどです。
温風は軽くなるので、床からの暖気は棚の周囲や棚の内部を自然上昇して行きますから、非常に高い温度分布を得る事が出来ます。

二重天井方式

室内を低風速にしたい時に、二重天井方式を希望されるお客様は、大変多くおられます。
全面吹出に出来れば理想的ですが、まず、全面吹出に出来ている二重天井は、見た事が有りません。必ず壁際の風速が上がり、低風速で実験したいお部屋の壁際にある机の上が、一番強い風が流れている現場ばかりです。天井の中央部からは風は出ず、空調機吹出口の真下は、吸込んでいる物も有ります。ほとんどの二重天井方式は、突き当りの壁から下方に吹出し、お部屋の中をクルクル回っているだけなのです。

二重天井方式の多くは、下図の様な空気の流れになっています。

右側の空調機から二重天井内に吹き込まれた風は、左壁にぶつかる迄は直進します。
ぶつかると左壁にそって強い下降気流が発生しますが、中央付近の天井は無風です。
霧吹きと同じ、ベンチュリ効果で、右の吹出口の真下は、吸込みになる例も有ります。

二重天井方式の問題点は、二重天井裏の高さを上げないと、風量の分布調整が難しくなり、その分だけ容積が増えて、空調効率が悪くなる事と、ルーバーが無いので、後からでは、風向、風量の調整が出来ません。せいぜい風の強い場所の天井裏に、邪魔板を置く程度になります。また、二重天井にすると、この設備だけで、かなりの高額になる事も問題です。

上の写真は、実際の二重天井の設置例です。この様な設備を要求されるお客様は、御予算面も考えられており、いずれもオールステンレスのお部屋です。

左の写真例は、二重天井ではありませんが、壁の一面を全面吹出とした例です。
反対側の壁の一面が吸込みになっており、水平層流としています。

これらのお部屋は、お客様のご希望で設置しましたが、後から風の吹出調整を行うには、このパンチングメタルの裏側で加工して調整するしか方法は無く、調整には手間がかかります。

室内ダクト方式なら、それぞれの吹出口のルーバーが自由に調整出来るので、風を嫌う所には風を流さず、流せる所には多く流す調整をして、全体の循環風量は下げない方が良く、この方法では、比較的簡単に高い温度分布が得られます。

弊社の空調装置は、送風量が自動可変です。温度の移行時には風速を早めて、早く温度分布を高めて、早く壁の温度をなじませています。設定温度到達後は自動的に低風速に下降します。
この時の風速の調整も、お客様が自由に設定する事が可能です。
また、室内ダクト方式なら、設置も簡単ですから、大きな費用も掛かりません。

二重天井方式は、風速分布調整の難しさ、高額な費用等で、個人的にはお薦め出来ない方式です。それでも、お客様からは、天井全面吹出にして風速を抑えたいから、二重天井方式にしてほしいと言う御希望が、とても多い方式ではあります。

どうしても二重天井にしたいご希望のお客様は、弊社のショールームを見学して頂き、ここの室内ダクト方式の低風速をご覧になってから、再検討される事をお薦めします。

ソックダクト方式

ソックスの様な、目の細かい布状のダクトです。下の写真では、3本使用しております。
このダクトは膨らんで、表面から均一に風が吹き出しますから、室内で感じる風速は全く有りません。低風速と言えば、極端に低風速な方法です。

但し、お部屋を暖める場合や、試験室周囲の気温が低い場合は、温かい空気はダクトの周りだけに集まり、温かい空気は軽いので、天井付近に暖気が溜まってしまいます。
空調機の下の方で吸い込んでも、上部だけで対流するので、床には暖気が下りて来ません。
長時間運転しても、お部屋の床や、棚の下部は温まりません。

風を極端に嫌うと言う事で、お客様の御希望でソックダクトを設置していますが、布の表面からの全面吹出ですから、確かに室内に風の強い場所は発生しません。
但し、風速が無いと言う事は、温度を上げる場合は、温かい空気は軽いので、天井に溜まり、温度の低い思い空気は床に停滞します。非常に温度分布が悪くなります。
送風を停止すると、右の写真の様にしぼんでしまうので、元気がなくなった様に感じます。見た目も感じが悪いので、個人的には、この方式も、あまりお薦め出来ません。

一般論ですが、風量や風速を落とすと、循環回数が減り、温度分布が悪くなります。分布を高めるには、風を流しても問題ない場所には風を流してやり、低風速が必要な場所には風を流さず、全体の循環回数は落とさない事が、温度分布を高める有効な対策になります。

熱気球が熱く軽くなった空気で空に浮かび、冷凍食品の陳列棚の冷たくて重い冷気は枠を超えて外に出ません。これがはっきり判明して、現在の冷凍食品陳列棚には蓋が有りません。
これを考えると、空気の重さは、温度によって、大きく変わる事が、誰にでも理解できると思います。空調業界でも、意外に、空気の重さを考えていない例は多いのです。

この様な事を考えると、試験室のダクトも、運転条件によって考慮する必要が有るのです。

温度を上げたり下げたりするヒートショック試験室では、通常の上からだけの吹出では、加熱時には床付近の棚が温まりません。

そこで左の写真の様に、加熱時には温風を下吹出として、冷却時には冷風を上吹出とする送風方向の自動切替を行い、短時間に温度分布を高めている機種も有ります。但し、この場合は、定時的に風の方向が変わりますので、エアーフィルタの取付はできません。

 
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